こうした探査ミッションは、具体的にどのように遂行されているのだろうか。米航空宇宙局(NASA)の小惑星探査機オシリス・レックス(OSIRIS-REx)の研究責任者(PI)で、米アリゾナ大学の宇宙生物学者ダンテ・ローレッタの最新著書では、その興味深い内情をうかがい知ることができる。
ローレッタは、著書『The Asteroid Hunter: A Scientist’s Journey to the Dawn of Our Solar System(小惑星ハンター:太陽系黎明期への科学者の旅)』の中で、町の食堂でコックのアルバイトをしていた学生時代から、21世紀の顕著な科学的業績の1つである宇宙ミッションの主任設計者の1人になるまでの自身の道のりを、年代順に軽妙な筆致で綴っている。
![NASAのオシリス・レックス(OSIRIS-REx)探査機が試料採取のために小惑星ベンヌに向けて降下している様子を描いた想像図。ロボットアームの先端には円盤状の試料採取装置TAGSAMが取り付けられている(NASA/University of Arizona)](https://images.forbesjapan.com/media/article/71542/images/editor/ee95923e751e4fa37d47f3d6c495ac68e0f494d1.jpg?w=1200)
このカクテルバーでの最初の出会いからわずか20年で、オシリス・レックスはベンヌから採取した45億年前のサンプルを地球に持ち帰り、無事にユタ州の砂漠に送り届けることに成功したのだ。そこではローレッタと仲間が、原初の状態のままのサンプルが帰還するのを心待ちにしていた。
今回のミッションでは、ベンヌについてどのようなことが明らかになったのだろうか。
ローレッタは電話取材に応じ、ベンヌは10億年ほど前に小惑星帯の中でバラバラに砕けた、はるかに大型の天体の破片だと語った。この天体は直径約200kmで、太陽からさらに遠く離れた、現在の土星がある辺りで形成されて移動してきた可能性が高い。この天体には、生命の基本的な構成要素となる物質がすべて含まれており、この天体の元になった親天体は、太陽系史の最初期の海洋天体か泥の天体だった可能性が高いと、ローレッタは続けた。