No.1はバルセロナの「楽しむ」店
今年、世界No.1に輝いたのは、スペイン・バルセロナの「ディスフルタール」。「エル・ブジ」の研究開発チームの3人組、エドゥアルド・シャトルック、オリオール・カストロ、マテウ・カサーニャスが、感情に訴えかけるアプローチを行う料理を生み出している。「楽しむ」という名前の店名通り、サービスの手法も含めて、驚きに溢れる演出が盛り込まれており、まさに食体験として楽しめる。「エル・ブジ」は、日本の美意識や情緒に大きく影響されていることで知られる。この「ディスフルタール」も、例えばバラの花びらにローズウォーターとジンのジェルを朝露のように垂らした一品など、儚く情緒的な料理に、その影響を感じることができる。
また、コロナ禍中に生み出された「恐れ」という料理は、ドライアイスの煙が立ち上る箱の中におそるおそる手を入れると、ほっとする温かさの、海水で茹でたばかりのエビが入っており、恐れを克服して挑戦すれば、おいしさが待っている、というメッセージが込められている。
シャトルックは、「店にいる間、現実を忘れ、まるで夢のような時間を過ごしてくれれば」と語る。今回のアワードを通して食の世界に「夢を見る」時代が、また戻ってきたと言えるだろう。
会場がラスベガスだったのも象徴的だ。ゴールドラッシュ時代は一攫千金を夢見てカリフォルニアに向かう人々の中継点として栄え、その後は砂漠の只中のカジノの街として知られるようになった。空港からすでにスロットマシーンが並んでいるのも、ラスベガスならではの景色で、空港からのタクシー運転手も「カジノで、一夜にして億万長者になった例も知っているよ」と、そんな空気を盛り上げる。
カジノは国籍も経歴も関係なく、「運」一つで人生の逆転劇を狙うことができる。アメリカンドリームの体現を目指しカジノに訪れる人々が、現代版のゴールドラッシュにも見えてくる。