クアルコムは先月、市場予想を上回る2024年度第2四半期決算を発表し、第3四半期の業績見通しも市場予想を上回った。同社による第3四半期の業績見通しでは、売上高が88〜96億ドル(約1兆3000億円~1兆5000億円)のレンジになるとされ、その上限で計算すると前年同期比で13%以上の増収が見込まれる。また、1株あたりの純利益の見通しは2.15〜2.35ドルとされている。
好調が続くクアルコムのビジネス
2023年のスマートフォン市場は、景気の不透明感が個人消費の重荷となったため小康状態を保っていたが、このところ状況は好転している。市場調査会社のCanalysによると、2024年第1四半期の世界のスマートフォン出荷台数は前年同期比で11%増加した。これは、モバイル業界、ネットワーク業界、コンシューマー・エレクトロニクス業界向けに半導体やモデム、ソフトウェアを供給するクアルコムには追い風だ。AIへの関心の高まりもクアルコムに利益をもたらす。AI向けに最適化されたSnapdragon 8 Gen 3など、同社のハイエンド製品に対する需要が高まっている。さらに、クアルコムに対する中国からの需要も高く、ハイエンドのAndroid端末向けの需要の高まりから現地のOEMに対する販売は昨年と比較して40%以上も高まった。クアルコムのチップは、PCに直接AIを組み込むという流れからPC市場でも人気を集めているようだ。5月、マイクロソフトは、クアルコムのSnapdragon X EliteおよびSnapdragon X Plusプロセッサを搭載したAI機能付きの新型PCを発表した。X Eliteプロセッサは、機械学習アルゴリズムの実行に特化したNPU(Neural Processing Unit)を内蔵している。
クアルコムの自動車向けビジネスも好調だ。電動化や自律走行などのトレンドが加速する中、半導体は輸送業界でより大きな役割を果たしている。自動車に搭載される半導体の割合も急増した。デロイトによると、新車の総コストのうちエレクトロニクスが占める割合は、2000年の20%未満から40%に上昇した。この数字は、今後10年以内に45%以上にまで拡大する可能性がある。
クアルコムの自動車向け売上高は、2024年度第2四半期に前年同期比35%増の6億300万ドル(約939億円)に達した。「Snapdragon Digital Chassis」と総称される自動車向けソリューションは、現在、デザインウィン(採用が決定した段階)ベースで約450億ドル(約7兆円)規模のパイプラインを持つ。クアルコムによれば、同社の市場シェアは拡大中で、2026年度までに自動車向け製品の売上高を40億ドル(約6234億円)超にまで引き上げる姿勢だ。