同紙が匿名の政府当局者4人の話として伝えたところによると、この影響力工作はイスラエルのディアスポラ省の指示に基づき、テルアビブを拠点とする政治マーケティング会社STOICが実行。「実在する米国人であるかのように装った数百の偽アカウント」を用い、X(旧ツイッター)、フェイスブック、インスタグラムなど複数のソーシャルメディアプラットフォームにイスラエル寄りのコンテンツを投稿したとされる。
偽アカウントは特に、民主党のハキーム・ジェフリーズ下院院内総務やラファエル・ウォーノック上院議員ら黒人議員を主なターゲットとし、イスラエルの戦争努力に資金提供を続けるよう促す投稿を繰りかえしていた。
NYタイムズによれば、影響力工作は少なくともX上では現在も行われており、投稿するコンテンツはもっぱらChatGPTを用いて生成されているという。
この報道に先立ち、米メタとOpenAIは先週、STOICによって実行された極秘の影響力工作を取り締まったとする脅威評価報告書をそれぞれ発表した。
メタは脅威に関する四半期報告書で、「組織的な不正行為」を行ったとしてフェイスブック上で510のアカウントを停止、11のページを削除、1つのグループを閉鎖したほか、インスタグラムでも32のアカウントを凍結したことを明らかにした。いずれも発信源はイスラエルで、「ユダヤ人学生、アフリカ系米国人、憂慮する市民」になりすまし、ガザでの戦争について主に英語で投稿を行っていたという。
投稿内容はイスラエル軍の行動に対する称賛や、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への批判などで、「イスラム過激派がカナダのリベラルな価値観を脅かす」といった主張もあった。メタはこの活動がSTOICと関連していることを突き止め、すでにメタのプラットフォームから同社を追放し、不正行為の停止通告も行ったとしている。
報告書によると、STOICのネットワークは「国内外の報道機関、米議員をはじめとする政治家や著名人のフェイスブックの公式ページにリンク付きのコメントを投稿していた」とされ、「認証済みアカウントのユーザーからプロパガンダだとの批判を招くことも多かった」という。
一方、OpenAIの報告書は、同社のAIツールをSTOICが利用して、反ハマス、反カタール、親イスラエルのコンテンツを生成・編集していたと指摘。STOICはガザにおける紛争やユダヤ人とイスラム教徒の関係性について、複数の工作を展開していたとしている。
なおロイター通信は4日、メタの元エンジニアが、インスタグラムでパレスチナ人の投稿を非表示にする「バグ」を修正しようとしたら解雇されたとしてカリフォルニア州の裁判所に同社を訴えたと報じた。
パレスチナ系米国人の原告フェラス・ハマドは、メタのガザ紛争に関するコンテンツの取り扱いには偏向があると主張。従業員がガザで親族が亡くなったと話した社内メッセージのやりとりを削除したり、パレスチナの旗の絵文字を使用しているか調査したりするなど、パレスチナ人に対する職場の偏見を助長していると訴えている。
(forbes.com 原文)