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2024.06.25 11:00

ディープテックベンチャーキャピタル UTEC 投資先企業が語る未来

「アフリカの国々にはまだまだ可能性が秘められていることを、日々実感しています」(秋田)

毎晩100万人を照らす明かり アフリカの電化から社会課題の解決に挑む。
WASSHA(ワッシャ)創業者・秋田智司が語るその「二人三脚」の歩み。


 アフリカのタンザニアでは日常的に電気を利用できない地域に住む人が3,400万人います。その多くは灯油ランプやロウソクをともして夜を過ごしますが、大して明るくありません。煙で壁が汚れるうえ、呼吸器官への悪影響もあります。

 WASSHAはこの未電化の村々にあるキオスク(個人商店)を通じて、村の住人にLEDランタンを貸し出すビジネスを手がけています。LEDランタンの充電は、キオスクに設置した太陽光パネルで行います。

 LEDランタンに内蔵されたバッテリーは携帯電話の充電にも使えます。私たちのビジネスの実体は、未電化地域の人々に生活の基盤となる電気を提供することなのです。

 タンザニアから始まったこの事業はナイジェリア、コンゴ、ウガンダ、モザンビークに拡大し、5カ国全体で毎日10万個以上が貸し出されています。

夜でも子どもが勉強できるようになった、夜遅くまで店を営業できるようになり収入が増えた、夜に家事ができるようになったという声を聞くときほどうれしいことはありません。私たちはこのサービスを通じてアフリカで100万人超の生活に大きなインパクトを与えることができています。

あきた・さとし◎WASSHA共同創業者/代表取締役CEO。1981年、茨城県生まれ。IBMビジネスコンサルティングサービス(現・日本IBM)での勤務を経て、2013年にWASSHAの前身となる会社を創業。2016年3月より現職。

あきた・さとし◎WASSHA共同創業者/代表取締役CEO。1981年、茨城県生まれ。IBMビジネスコンサルティングサービス(現・日本IBM)での勤務を経て、2013年にWASSHAの前身となる会社を創業。2016年3月より現職。



 2013年の創業時、U T E C E I R(Entrepreneurs In Residence)というプログラムに参加し、UTECの支援を受けながら事業計画を練り、起業しました。UTEC CEOの郷治友孝さん、COOの坂本教晃さんには10年以上にわたり継続的にアドバイスを受けています。

 特に坂本さんには、深夜にご自宅に押しかけたり、経営合宿や経営陣との1on1を行ってもらい、何時間も議論しながら事業計画を一緒につくったりと大変お世話になりました。アドバイスなんて軽いものではなく、一緒に悩みながら事業をつくっている、並走いただいているというほうがしっくりきます。

 16年にスタンフォード大学の起業家支援プログラム「StartX」に参加したのもいい思い出です。郷治さんに「ぜひ参加してほしい」と言われ、半ば強引に送りこまれたのです。しかしシリコンバレーで3カ月過ごす間に多くの超優秀な起業家たちと知り合い、大いに刺激を受けました。

 23年2月にはUTECの紹介で、IEA(国際エネルギー機関)の閣僚会合のイベントに日本から唯一の招待企業として参加しました。国際機関との意見交換、世界の閣僚クラスの政策決定者たちとのコネクションは大きな収穫でした。WASSHAの認知度が高まり、欧州の企業と協業のチャンスも生まれつつあります。

 Power to the people(ビジネスを通じて、開発途上国の人々をエンパワーする)がWASSHAのミッションです。今後も未電化地域でさらにサービスを広げるとともに、私たちのキオスクのネットワークやプラットフォームを活用し、ほかの日本企業とも協力しながら新たな事業を開発し、アフリカやその他の地域の社会課題解決に取り組んでいきます。

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アンメット・ニーズの高い、いまだ有効な治療法がない自己免疫疾患等の分野に光を当てるバイオベンチャー、レグセル。マイケル・マッキュラー代表が語るUTECの支援と医療革新。


 私たちは今、自己免疫疾患等の患者さんを対象に国内外での臨床試験を始めるべく、規制当局や医療関係者との話し合いを進めています。

 私たちが治療に活用するのは制御性T細胞、通称Treg(Tレグ)です。Tregは、異物(外来抗原)や自分の体のタンパク質等(自己抗原)を認識し炎症反応を引き起こす働きをもつT細胞が働き過ぎないよう、ブレーキの役割を果たしています。

 多くの自己免疫疾患はこのTregの不足、機能不全があったりするために起こると考えられています。自己抗原を認識するT細胞を含む細胞集団を患者さんから採取し、当社オリジナルの培地によりTregに変換し、患者さんに投与します。



Michael McCullar◎1966年生まれ。カリフォルニア大学卒業後、製薬・バイオベンチャー企業に20年以上従事。Tolero Pharmaceuticals(大日本住友製薬にM&A)のCOO、On Quality Pharmaceuticalsの CEOを経て、2023年レグセル代表取締役社長に就任。


 遺伝子操作を行うほかの方法と異なり、がん化のリスクが低いとされていて、疾患に関与する抗原が不明で、かつ複数存在する場合でも、疾患原因となる抗原を幅広く認識するTregを作製できるのが特徴です。

 当社の創業科学者は、大阪大学特任教授の坂口志文(しもん)先生です。彼が存在を提唱、証明したTregを活用して、自己免疫疾患等の治療をトランスフォームすることが私たちのミッションです。我々の技術は関節リウマチ、1型糖尿病、多発性硬化症などの多岐にわたる疾患の治癒に応用可能だと考えており、国内外での臨床試験を検討しています。市場規模は数千億円に達すると見込んでいます。

 私が当社にCEOとして参画したのは2023年10月です。坂口先生はライフサイエンス領域の専門家であれば、米国でも知らない人はいないといえるくらいの高名な世界的科学者で、ノーベル賞候補という声も聞かれます。日本発のワールドクラスの研究成果をグローバルでの事業化を通じて世界の患者さんに届けたいとの郷治さんの言葉に触発され、参画を決めました。

 UTECには今も手厚いサポートをしていただいています。日本の経営層はリスク回避的といわれたのは過去の話で、起業家精神にあふれる人が確実に増えています。ノーベル賞受賞者の数や、特許数、新薬の数でも世界トップレベルの日本に、研究を阻む要素はありません。

 惜しい点があるとすれば、日本の製薬企業や創薬ベンチャーに医師の資格をもつ人材が少ない点でしょう。アメリカでは企業に所属する医師が臨床試験の計画や実施に重要な役割を果たします。日本とアメリカの間にあるのは才能の差ではなく経験の差。これを埋めればアメリカ同様、日本でも創薬ベンチャーが次々と成功すると考えています。

 これまで私は数社のバイオベンチャーで、さまざまなステージにかかわってきました。この経験をレグセルで生かしたい。今後も新薬開発の各ステージで求められる経験・ケイパビリティを有するグローバルチームを構築し、日本発の世界的な技術をベースにした革新的製品を世界の患者に届けられるよう取り組んでいきます。

レグセルの技術顧問であり、大阪大学特任教授、京都大学名誉教授の坂口志文氏(左)とマッキュラー氏。

レグセルの技術顧問であり、大阪大学特任教授、京都大学名誉教授の坂口志文氏(左)とマッキュラー氏。

promoted by UTEC/text by Shinya Midori