政治

2024.06.05 13:00

インド与党「想定外の議席減」で株式市場に動揺、60兆円が消失

Narendra Modi(Photo by Sanchit Khanna/Hindustan Times via Getty Images)

Narendra Modi(Photo by Sanchit Khanna/Hindustan Times via Getty Images)

6月1日に投票が終了したインドの総選挙は、出口調査の段階ではモディ首相率いるインド人民党(BJP)が単独過半数を維持する見通しだと報じられていた。しかし、4日に開票が始まると、人民党は2019年の前回選から議席を大きく減らすという想定外の状況が判明し、株式市場に動揺が広がった。

これを受け、ゴータム・アダニやムケシュ・アンバニを含むインドの大富豪らは、保有資産を大きく減少させた。

開票結果によれば、モディ首相の人民党は240議席を獲得し、第1党を維持しているが、過半数の272議席には届かなかった。これは、同首相が連立パートナーである国民民主同盟(NDA)の2つの主要政党からの支持に大きく依存して政権運営を行う必要があることを意味する。この2政党の指導者がモディ首相と手を組んだのはわずか数カ月前のことで、今後も同首相を支持するのか、野党連合に付くかは明確になっていない。

4日のインドの株式市場は大幅に下落し、ボンベイ証券取引所のSENSEX指数は、午後の取引で6%近く下落した。

インドで2番目に裕福な人物であるアダニ・グループを率いる大富豪アダニの保有資産は、3日の株価の急騰で80億ドル(約1兆2000億円)も上昇し980億ドル(約15兆2000億円)に達していたが、4日の株価の急落で792億ドル(約12兆3000億円)に減少した。

アジアで最も裕福な人物であるムケシュ・アンバニの資産も、4日に26億ドル(約4041億円)減少し、1069億ドル(約16兆6000億円)となった。ブルームバーグによると、4日の株価の急落でアダニ・グループの上場企業の時価総額は合計450億ドル(約7兆円)の減少を記録し、インドの株式市場全体は3860億ドル(約60兆円)を失った。

モディ首相率いる連合は、世論調査では360~400議席を獲得し、下院で過半数を獲得すると予測されていた。しかし、実際の選挙結果は、与党がこれらの予測を下回るだけでなく、2019年の実績(与党連合が352議席を獲得)をも下回る結果となった。

これに対し、野党連合のインド国民開発包括同盟(INDIA)は2019年の94議席から229議席へと議席数を増やしている。

そんな中、人民党の連立パートナーであるビハール州の政権党ジャナタ・ダル統一派(JD-U)のニティシュ・クマール党首と、アンドラ・プラデシュ州の首相に返り咲く予定のテルグ・デサム党のナラ・チャンドラバブ・ナイドゥ党首の動向に注目が集まっている。

報道によると、INDIAは両氏に連立の可能性を打診したとのことで、もしこの2人が政権交代に動くなら、モディ首相の政党は政権樹立に必要な議員数を確保できない可能性がある。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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