欧州

2024.06.05 10:00

ウクライナ軍戦闘機、米国製の新たな滑空爆弾を使い始める 数量はロシアにかなわず

GBU-39/B小直径爆弾(SDB)。2019年、イスラエル・ハツェリムにあるイスラエル空軍博物館(Lerner Vadim / Shutterstock.com)

ウクライナ空軍が重量約130kg、射程約110kmのGBU-39を保有していることは、つい最近まで一般には知られていなかった。5月末、翼の下にGBU-39を4〜6発搭載したMiG-29の写真がソーシャルメディアで共有され、初めて明らかになった。

ウクライナ空軍のMiG-29とSu-27は、米国製のJDAM-ER精密誘導キットやフランス製のAASM精密誘導キットを装着した滑空爆弾については、すでに昨年、米国とフランス、ウクライナの技術者の協力で搭載可能なように改修されていた。JDAM-ERもしくはAASMを付けた滑空爆弾の重量は220kgはある。

GBU-39はJDAM-ERやAASMを装着した爆弾よりも小型というメリットがあり、射程も長いとみられる。JDAM-ERとAASMの射程は最良の条件でも70〜80km程度とされる。MiG-29とSu-27は各機GBU-39を最大6発搭載できるようなので、1回の出撃で6つの目標を攻撃できる。JDAM-ERやAASMの場合よりも遠くから発射できるとすれば、ロシア側の防空兵器に狙われるリスクも軽減できるだろう。

GBU-39に関してもうひとつ重要なのは、価格の安さだ。GBU-39は1発あたりわずか4万ドル(約620万円)で、これはJDAM-ERと同じくらいだがAASMと比べると5分の1だ。米国は基本的に、ウクライナに引き渡す弾薬はすぐに補充するようにしていて、さらに言えば米国の予算も無限ではないので、GBU-39は安価な分、ウクライナに引き渡せる数も多くなるだろう。
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「どのようなものでも(滑空爆弾の)追加供給は非常に歓迎される」とアスコラがコメントしているとおりだ。

ロシア空軍の爆撃ペースから判断すると、ロシアの産業界は滑空誘導キットを月に3000個程度生産できるようだ。20〜30機のスホーイが各機1日おきに2〜4発発射すれば使い尽くす数ということになる。

ウクライナ空軍にも、同じくらいのペースで爆撃できるだけのミグやスホーイがあるはずだ。今夏以降、計85機取得することになっているF-16戦闘機が届けば、ロシア側をしのぐほどの滑空爆弾攻撃が可能な戦闘機がそろうかもしれない。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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