ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、中国政府が約10年前に「中国製造2025」と呼ばれる政策を開始して以来、どのように産業発展を図ってきたかを報じている。それによると、中国が輸出企業を支援する手法の一つが、国有銀行を通じて主要セクターに低金利の融資を行うことだという。ドイツのキール世界経済研究所によると、2022年には中国の上場企業のほぼ全てが政府から補助金を受け取っていた。
中国は最近、日本とドイツを抜いて世界最大の自動車輸出国になった。その大きな要因はEVの生産拡大であり、中国企業は世界のEVバッテリーの大半を生産している。欧州の自動車業界は中国に脅威を感じており、EUは中国車に対する関税を55%まで引き上げることを検討している。バイデン政権は米国製EVの生産を推進しており、国内企業を保護したい考えだ。
バイデン大統領は、トランプ政権が中国に課した関税の大半を維持してきたが、新たな品目に対する追加関税は実施していない。しかし、米大統領選まで半年を切る中、トランプが国際貿易を選挙戦の目玉のひとつに掲げていることから、バイデン大統領は中国に対して厳しい姿勢を示そうとしている。
NYTの元記者でオバマ政権の自動車作業部会を率いていたスティーブ・ラトナーは、NYTのコラムで、バイデン大統領がトランプの通商政策に同調していると受け取られれば、逆効果になりかねないと指摘した。しかし、米国株式市場の好調ぶりを見ると、市場はバイデンとトランプの政策には大きな隔たりがあると捉えているようだ。
トランプが2018年初頭に中国と貿易戦争を開始したとき、投資家は中国が報復に打って出て、世界経済に多大な悪影響を及ぼすことを懸念した。S&P500種株価指数は、2018年に貿易摩擦がエスカレートすると15%近く下落した。
米国の市場が過去最高値を記録したのは、2019年半ばに中国が2年間で米国の製品・サービスの購入を2000億ドル(約32兆円)増やすことに合意してからだ。しかし、ピーターソン国際経済研究所が指摘するように、中国はその約束を守らなかった。トランプが中国への圧力を強めようとしているのは、このことが理由かもしれない。