キャリア・教育

2024.06.08 13:00

創造性を守るための「ノー」をデフォルトにする仕事術

Getty Images

燃え尽き。次から次へと押し寄せるメール。増え続ける会議。

これらはすべて、5月8日に公開されたマイクロソフトとLinkedIn(リンクトイン)による年次調査『Work Trend Index』最新版で、職場の問題として挙げられた状況だ。

この調査によると、回答者の68%が「大量の仕事を速く仕上げること」に苦労しており、「燃え尽き感を覚える」と回答した人の割合も46%に上った。

また、仕事において、コミュニケーションに割かれる時間が増えているなかで、そのあおりを受けているのが創造性だ。働く人たちは、労働時間の6割をメールやチャット、ミーティングへの対応に費やしている。PowerPointやWordのような制作用アプリを使う時間は、全体の40%だけだった。

当然ながら、多忙な人々は、創造的な仕事に使う時間を、集中力を削ぐさまざまな要素から守る新たな方法を見つけ出している。きちんと境界線を引いて、生産性を向上させようとしているのだ。筆者はこうした姿勢を「意図的に柔軟性を発揮しないこと」と呼んでいる。集中力を奪う邪魔が絶え間なく入ってくる今時の職場環境において、こうした境界線は、なんであれ仕事を完了させたい人にとって必須となっている。

「ノー」をデフォルトの回答に

クララ・エマヌエルは、自営業で働く母親たちに対してワークライフバランスの向上を提案する企業WorkWelle(ワークウェル)の共同創業者だ。同氏は、「時間が空いているか」という問い合わせが来たら、「ノー」をデフォルトの回答にしていると話す。自分の創造的・生産的な時間を守るためだという。

エマヌエルは、こう説明する。「自分の境界線について説明する回答例を、前もって用意している。『ノー』や『あとでご連絡します』といったシンプルな回答をデフォルトにすることで、『絶対にやらせてください!』と言いたくなるようなチャンスがやってきた時に、優先事項を見直す時間を確保することができる」

さらにエマヌエルは、時間が空いているかという問い合わせに回答する方法についても、時間の節約を徹底している。そのために、不在を伝える自動応答を、休暇中以外の状況でも活用している。例えば、保育所への送り迎えや、深く集中して書き物をする時、瞑想の時間などだ。

同氏はこう付け加える。「母親と経営者という2つの役割を務めているので、私にとっては、仕事と家庭生活のあいだに明確な境界線を引くことが重要だ」

大局的に事業を再構築する時間を設ける

経営者の中には、さらに一歩踏み込んだ策をとっている者もいる。ロンドンでクラフトベーカリーのAnges de Sucre(アンジュ・ド・シュクレ)を立ち上げ、子ども向け焼き菓子のレシピ本シリーズを執筆しているレシミ・ベネットは、自身が経営するベーカリーに毎週1日、定休日を設けるという難しい決断に踏み切った。

これは、新しいケーキの味やデザインを考案して試したり、集中して執筆作業に取り組んだりするために、途中で邪魔が入らない創造的な時間を確保するためだった。

ベーカリーの営業中、ベネットは、製造工程の管理のほか、顧客対応や注文の処理、配送ドライバーの管理など店の運営の統括を行なっている。しかし、従業員や顧客、サプライヤーに対して「即応できる態勢」をとることで、自身の創造性を発揮するプロセスが奪われていった。
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翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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