ミーティングに費やす時間の上限を設定する
働きすぎが常態化していることで悪名高い職種であったとしても、創造的な業務に費やす時間を確保し、生産性を向上する方法はある。Britton & Time(ブリトン&タイム)法律事務所の共同創業者で最高経営責任者(CEO)を務めるポール・ブリトンの場合、自身のスケジュールは長年にわたり、ミーティングやメール、緊急の要請で埋め尽くされ、大混乱に陥っていたという。そのため、事業全般に集中して取り組む機会が、なし崩し的に奪われていた。ブリトンはこう振り返る。「ビジネス街では、月曜の朝から、充血した目をしている疲れ切ったビジネスパーソンを見かけることは珍しくなかったが、実は私もその1人だった。日曜深夜に顧客からの問い合わせが舞い込み、やっとのことで対応を終えて月曜日を迎えると、この日も社内会議で予定がいっぱい、という状況だった。プリンターのインクや、オフィスで提供される軽食から、今後展開予定の最新の業績回復計画まで、あらゆる議題を討議しなければならない。ミーティングに週30時間を費やすことも珍しくなかった。それが当たり前になっていた」
しかし現在、ブリトンと、この法律事務所で働く同僚たちの働き方は一変した。現在は火曜日が「会議の日」となり、緊急時を除いて、社内外のミーティングはすべてこの日に行う決まりになっている。
木曜日は「アイデアの日」に指定されており、雑事に邪魔されることなく創造力を発揮できる時間となっている。この日には、1日の大部分の時間で、メールは非通知に、電話は留守電モードに設定され、チーム全体が深く集中することに専念できる。
ブリトンはこう解説する。「当初、私は変化に反発を覚えていた。『もしクライアントから緊急の要請があったらどうするんだ?』と。そこで、緊急の案件を仕分けする窓口として『連絡担当者』を任命することにした。これにより、担当者以外の人は、思考を邪魔される機会を減らすことができた」
エマヌエルと同様に、ブリトンも「ノー」と言う勇気を身につけていった。ブリトンの場合は、「創造性を生かした質の高い成果物、収益の創出、事業目標の推進」に直接的に貢献しないものすべてが、「ノー」を突きつける対象となった。
「見返りを実感できない人脈作りのイベントや、事業や戦略、創造性といったテーマから外れる法曹関連のイベントなどが、この対象に含まれていた。さらには、クライアントからの要請に関しても、当事務所が受任すべき仕事についての自分のビジョンと一致しないものについては断わるようにした」とブリトンは証言する。
こうした改革が引き金となり、根本的な変化がもたらされた。「常時オン」であることをよしとする混沌とした職場環境は、集中して課題に取り組む、生産性の高い環境へと変貌を遂げたのだ。
ミーティングを明確にスケジュール化し、邪魔が入らずに仕事に集中できる日を設けたことで、チームの生産性が向上した。これにより、心から誇りに思えるような仕事の成果を出し、事業を現実化させることができた。
この変化について、ブリトンはこう語る。「創造性を発揮できるからこそ、この仕事を選んだはずなのだが、私たちの事務所では、多くの職員が時間に追われ、創造性が『人質に取られた』形になっていた。要するに、創造性はビジネスリーダーにとって最も価値のある資産だ。だからこそ、何が何でも守らなければならない」
(forbes.com 原文)