M1の対ドローン防護を高める方策は、現地でケージ装甲を装着するという選択肢しかなかったわけではない。米国に特注品を用意してもらうという手もあった。
ウクライナに供与されたM1A1は、装甲の薄い車体側面を標準の「M-19エイブラムス・リアクティブ・アーマー・タイル(ARAT)」という爆発反応装甲キットで覆っている。爆発反応装甲には爆発性の小さなプレートが含まれており、被弾すると外向きに爆発して敵弾による本体へのダメージを軽減する。
だが、砲塔にはこの爆発反応装甲が付いていない。前出の戦車兵は「(車体の)側面だけでなく砲塔も防護できるように、米国のパートナーに爆発反応装甲を提供してほしいというのが、乗員としても大隊としてもわれわれの願いです」と話している。
米陸軍はM1の最新型であるM1A2では、砲塔にパッシブ、つまりリアクティブ(爆発反応型)でない追加装甲を付け足すことで問題に対処している。しかし、この追加装甲にはおそらく、米国が輸出しない方針にしている劣化ウランが含まれている。米国防総省はウクライナ向けのM1A1についても、引き渡す前に業者に委託して、砲塔の装甲の劣化ウラン製パーツをタングステン製に交換していた。
エイブラムスの砲塔にARATを装着することは不可能でない。製造元の米エンサイン・ビックフォード・エアロスペース・アンド・ディフェンス(EBAD)は、ARATを「車体、スカート(キャタピラを覆うパーツ)、もしくは砲塔用の装甲」と紹介している。
ただ、ARATは、M1の開発元である米ジェネラル・ダイナミクスが溶接するブラケットに取り付けることになる。請負業者がウクライナ軍の残りのM1を改造してブラケットを付けたり、国防総省がARATをウクライナに送ったりするのに何が必要になるのかは不明だ。
いずれにせよ、それには時間がかかる。もしかすると数カ月かかるかもしれない。第47旅団には、それほど長い間この戦車を使わずにとっておく余裕はないだろう。第47旅団は頼むのも待つのもうんざりし、自分たちでケージ装甲を付け足したということのようだ。
(forbes.com 原文)