アバクロは昨年、前年比16%増の売上高を記録したのに続き、29日に発表した第1四半期(2〜4月)決算で売上高が前年同期比22%増の10億2000万ドル(約1600億円)に達し、「史上最高の第1四半期の売上高」を記録したと報告した。
同社の株価は、決算発表後に20%以上急騰し、31日午後には過去1年間の上昇率を459%にまで拡大した。アバクロ株の上昇率は、同期間のエヌビディア株の上昇率の187%を上回った。
アバクロは、通期の売上高が前期の約43億ドルから10%増加すると予想し、従来予想の4〜6%増から引き上げた。同社の2つのブランドはいずれも堅調な売上増を記録した。23歳から40代以上のミレニアル世代をターゲットとするブランド、アバクロンビーは31%増で、13歳から21歳のZ世代をターゲットとするホリスターは12%増だった。
オハイオ州に拠点を置くアバクロは、1990年代から2000年代初頭にかけてモールに欠かせない人気ブランドだったが、2010年代に物議を醸す排他的なマーケティングが厳しい非難を浴びて、人気の低下に直面した。
同社はその後、2017年に就任した女性CEOのフラン・ホロヴィッツの下で、多様性に重点を置きつつ商品ラインナップを拡大。ブランドイメージを刷新して新たなスタートを切った。
アバクロが打ち出した「インクルーシブ戦略」には、90年代風のローライズジーンズや、TikTokで話題となったCurve Love(カーブラブ)と呼ばれるゆったりめのラインなどが含まれ、スリムな顧客層のみを対象とした以前のイメージからの脱却を目指している。
同社はまた3月に、カジュアルウェア以外の商品ラインアップを多様化するため、花嫁や結婚式のゲスト向けのA&F ウエディング・ショップ・コレクションを発売したが、このプロダクトは「当初の期待を大きく上回った」と決算発表後の電話会議でホロヴィッツは述べていた。
「最も嫌われた小売業者」からの脱却
創業131年の老舗アパレル企業であるアバクロの前CEO、マイク・ジェフリーズは、物議を醸す発言で知られていた。2006年のインタビューで、ジェフリーズは「クールでハンサムな人たちのみを顧客にしたいので、店舗ではハンサムな人たちを雇う」述べていた。アバクロはまた、上半身裸の男性モデルを起用した「性的なマーケティング」で知られたが、2015年にこの慣行を終了し、店内の強い香水や大音量の音楽などもやめると発表した。2016年に「米国で最も嫌われている小売企業」に選ばれた同社はその後、「より多様で包括的な文化」の育成に尽力することを誓った。
2017年に新CEOに就任したホロヴィッツは、さまざまな体型や肌の色のモデルを起用して商品ラインアップを拡大するなど、包括的なブランドの再構築を主導した。
アバクロの驚異的な復活が話題となっている一方で、同社と並ぶ老舗ブランドのGap(ギャップ)もまた、新たな経営陣のもとで復活を遂げている。同社は、昨年8月に玩具メーカーのマテルで社長を務めていたリチャード・ディクソンをCEOに迎えて以来、業績を回復させており、株価は過去1年間で約240%上昇している。
(forbes.com 原文)