アマゾンに出品中の無名のショップが、彼女のブランドの偽造品を販売していただけでなく、彼女のビデオを使って商品を宣伝していたのだ。しかも、その動画は人工知能(AI)で彼女の顔を他人の顔に入れ替えたものだった。
「信じられないほど不快な気分です」と彼女はフォーブスに語った。「この会社のビデオには、私の体が映っていますが、顔は他人のものなのです」
コピー商品の問題は、AIの進歩によってかつてないほど深刻になっている。一部の人は、中国のファッション企業は知的財産の窃盗を前提としていると主張している。中国ファストファッション大手のSHEIN(シーイン)に対する訴訟の原告は、同社が「AIとアルゴリズムを巧みに活用することで、世界トップクラスのアパレル企業となり、1日に数千もの新たなアイテムをリリースしている」と主張している。
そして今、ホーが身をもって知ったように、コピー商品はデザイナーの顔をディープフェイクで加工したビデオを使って宣伝されている。フォーブスがこの被害をアマゾンに警告した後、同社は、ホーの肖像を使用していたアイテムを削除した。
しかし、偽物のアイテムを製造したBegoingというブランドは、現在もアマゾンとウォルマートの両サイトで商品を販売している。Begoingは、フォーブスからのコメント要請に、回答を返さなかった。
そして、この被害は彼女のデザインの盗用だけにとどまらない。ホーは今月初めにTikTokに投稿した動画で、ポップフレックスのモデルや顧客の写真が盗まれ、他のコピー商品を売り込むためにアマゾンの商品ページに掲載されたことを指摘した。
「私たちは誰もこんなことに同意していないし、お金ももらっていない」と彼女は述べている。
ポップフレックスの顧問弁護士を務めるシシー・シーは、ファッション業界が知的財産権(IP)の問題に対処するための標準的な取り組みは、侵害の可能性のあるアイテムを監視し、販売中止を求める書簡を送付することだが、それには手間もコストもかかると述べている。しかし、特定の人物のディープフェイクを作成することは、「パブリシティ権の侵害」という、異なる法的領域に入り込む可能性があると彼女は指摘した。
AIでコピー商品を検出するツール
Eコマース分析会社Marketplace Pulse(マーケットプレイス・パルス)のCEO、ジョーザス・カジウケナスは、フォーブスの取材に、ホーの経験はAIの普及がもたらす「未来の前触れ」である可能性があると語った。「彼らは、TikTokで人気のビデオを改変したり、その一部を使って新しいビデオを作成することで、その人気を再現しようとしている。AIの普及は、このような行為をますます広めることにつながるかもしれない」
一方、ホーは、コピー商品に対抗するために自身のデザインの商標登録を進めている。彼女はまた、疑わしいアイテムの検出を自動化するツールを提供するOuttake AI(アウトテイクAI)や IPShark(IPシャーク)といった企業との提携も模索しているが、今のところその高額なコストがネックとなっている。
「コピー業者との戦いに全財産を注ぎ込むのは難しい」と彼女はフォーブスに語った。
(forbes.com 原文)