北米

2024.06.01 11:00

トランプ有罪評決でSNSにあふれる誤情報、個人に委ねられる見極め

lev radin / Shutterstock.com

ドナルド・トランプ前米大統領は5月30日、ニューヨーク州地裁での刑事裁判で業務記録を改ざんしたとして、34件の罪状すべてで有罪評決を受けた。その後、さまざまな情報が飛び交った。

「トランプは間もなく懲役刑に直面する」「連邦政府の公職に就く資格はない」「投票権も与えられない」「量刑が出るまで足首に監視装置をつけなければならない」「裁判は完全ないんちきで、控訴すればすぐに覆される」「11月の大統領選で再選すれば、トランプは自分自身を恩赦することができる」

法律の専門家によれば、こうした情報はいずれも真実ではない。にもかかわらずこうした誤情報はSNS上をすぐさま駆け巡った。この裁判や容疑、そして特にこの裁判が及ぼす影響に関する誤情報や偽情報は評決が出されるずっと前から広まり始めていた。

だが誤情報・偽情報は増えるばかりで、何が真実で何が憶測なのか、そして最も重要なことに何が純粋に間違いなのかを、多くの人はわざわざ確認しようとはしていないようだ。

事実は重要だ。だがSNS上ではそうではなく、人々は単に事実であってほしいことをすぐに再投稿する。

「かつてないほど情報にアクセスできる今、私たちは何を読み、何に耳を傾け、あるいは何をみるかについて、慎重にならなければならない」と米リバティ大学でジャーナリズムを教えるエイミー・ボーンブライト助教授は警告する。「オンラインの情報が意図的なうそであったり、過ちにより真実でなかったりする方へとインターネットが傾く瀬戸際に我々はいる。繰り返しになるが、ネット上で何を見聞するかの見極めはユーザーにかかっている」

拡散を促進する混乱と感情

SNS上での誤情報や偽情報の拡散は今に始まったことではない。政治的な対立が深まったことで、SNSは政治に絡んだ問題に関して強い意見を持つ人々の考えなどを増幅させるエコーチェンバーと化している。だがトランプの裁判の今回の評決では、SNS上での誤情報や偽情報の多くが急速に広まっているという点で注目に値する。

米ミシガン大学情報学部教授で教学担当副学長のクリフ・ランペ博士は「誤情報が出やすい状況だ。誤情報が出回りやすくなる要因の1つは混乱であり、前例がない今回のような状況は本質的に混乱しやすいものだ」と説明する。

「情報が入り乱れるようになるもう1つの重要な要素は、非常に感情的な出来事であることだ。異なった政治的立場にあるどちらの側にとってもそうであるようだ」とランペは続ける。「人々が感情的になって情報に接し、共有すると、時間をかけた熟慮というような誤情報を一蹴することができる思考をスキップする傾向がある」
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翻訳=溝口慈子

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