ミシガン州とテキサス州で過去に感染した2人も酪農従事者で、いずれも症状は目の充血のみだった。だが、今回新たに確認されたミシガン州の感染者は呼吸器症状も訴えており、症状がより広範囲に広がっている。
この新たな事例はウイルスが変異したことにより、人間に対して病気を引き起こしやすくなったということなのだろうか?
米疾病対策センター(CDC)によると、今回感染した患者の呼吸器症状は咳で、涙目の症状も訴えているが、発熱はないという。この患者は抗インフルエンザウイルス薬のオセルタミビルを投与され、自宅で隔離されており、合併症もなく回復に向かっているようだ。
CDCは現在、ウイルスが何らかの形で変異していないかどうかを調べるため、この患者から採取したウイルスの全遺伝情報(ゲノム)の配列を解析している。これまでのところ、同ウイルスが人から人へ感染した兆候はない。
人間同士の感染がないことは、極めて重要だ。人間の間で伝染病やパンデミック(世界的大流行)が発生するには、人から人への持続的な感染が必要となるからだ。すべての人間が牛と働き、牛と暮らし、牛と飲食をともにするわけではない。これまでのところ、鳥インフルエンザの人間への感染は、ウイルスを持った牛と接触した場合に限られている。例えば、今回感染が確認された患者は、マスクを着用することなく病気の牛と接触したことでウイルスに感染した可能性があると報告されている。ミシガン州で発生した最初の感染事例は、ウイルスの混入した牛乳が目に入ったことで発生した。
これまでの3件の事例はいずれも感染した牛と直接接触していることから、CDCは現在のH5N1型鳥インフルエンザによる米国の一般市民への健康リスク評価を変更しないとしている。鳥インフルエンザの感染リスクは、ウイルスを持つ動物にさらされることで高まる。つまり、感染動物に接触することのない一般市民のリスクは依然として低い。
もし牛や鳥に近づくのであれば、防護具を着用し、インフルエンザのような症状に気を付けよう。動物が感染しているかどうか分からない場合もあるため、周囲に牛や鳥がいる場合は注意すること。牛は「気分が悪い」、「熱があるからカウベルを鳴らしてくれ」などとは言わないからだ。
また、昨今の高病原性鳥インフルエンザの流行で何が起きているのか、常に把握しておこう。鳥インフルエンザは、牛と行動をともにしたり生乳を飲んだりしない人にとっては、現在のところそれほど深刻な脅威ではないかもしれない。だが、インフルエンザウイルスは変異し続ける。変異株の多くは大した違いをもたらさないかもしれないが、危険な突然変異がいつ起こるのかは誰にも分からない。
(forbes.com 原文)