AIのパイオニア、IBMの企業戦略
IBMは4月、2024年第1四半期決算を発表し、売上高は前年同期比1.5%増の144億6000万ドル(約2兆2000億円)にとどまった。ソフトウェア部門はそれなりに健闘したものの、コンサルティング部門とインフラ部門の減速により、市場予想を下回る結果となっている。しかし、投資家にとっての焦点はIBMの人工知能(AI)事業であり、企業による自社アプリケーションやソフトウェアへのAIの導入が加速する今、多くの関心を集めている。IBMはAI分野のパイオニアだ。1990年代にチェスの世界チャンピオン、ガルリ・カスパロフを破ったスーパーコンピューターのディープ・ブルーや、米人気クイズ番組『ジェパディ!』でチャンピオンを破った高性能コンピューターのIBM Watsonなど、この分野での注目すべき貢献がいくつもある。
現在、ChatGPTや大規模言語モデル(LLM)の成功を受けて、世界は生成AI技術にますます注目している。グーグルやマイクロソフトといった大手ハイテク企業が、一般消費者向けの汎用的なLLMに注力する一方で、IBMは企業向けにカスタマイズされたモデルにフォーカスする。IBMが提供する企業向けAIプラットフォームのIBM watsonxは、企業が法律や規制上の懸念を考慮しながら、ビジネス・アプリケーション用にカスタマイズされたAIモデルを訓練、調整、検証、展開することを可能にするものだ。IBMによる生成AI事業は、その立ち上げ以来10億ドル(1568億円)を超える規模にまで成長したと同社は示唆しており、企業向けにAI関連ソフトウェアの導入を手助けするコンサルティングでも利益をあげているようだ。