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2024.06.13 10:15

起死回生『地球の歩き方』がオカルト誌「ムー」とコラボ、大ヒット13万部の続章

『地球の歩き方 ムーJAPAN: ~神秘の国の歩き方』

2020年11月、ダイヤモンド・ビッグ社が刊行していた『地球の歩き方』の出版事業とインバウンド事業が、学研プラス(当時)に譲渡されるニュースが流れた。

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ガイドブックの金字塔、コロナで「売上げ9割減」

海外旅行ガイドブックの草分けともいえる大ヒットシリーズ『地球の歩き方』が存続を危ぶまれる状況に陥ったのは2020年のこと。原因はほかでもなく、新型コロナ感染症拡大だ。海外渡航の自粛要請や各国の水際施策、入国規制により、売上げは前年比実に「9割減」となったのだ。出版元のダイヤモンド・ビッグ社は経営難に陥り、1979年創刊のブランドも「すわ消滅」と思われた。

ところがそんな時、出版・教育大手の学研グループが同社の人材、制作体制含めてフルパッケージで受け入れ、新会社「地球の歩き方」として再出発させるという事業継承を発表、世間をあっといわせた(ちなみに世界ナンバーワンのガイドブック『ロンリープラネット』も、2020年にIT企業に買収されている)。社長に指名されたのは、「元バックパッカー」でもある、学研HD出身の新井邦弘氏だった。

その後、国内版として『地球の歩き方 日本』、『地球の歩き方 東京の島々』、さらには『地球の歩き方 東京 23区』、『地球の歩き方 ディズニーの世界: 名作アニメーション映画の舞台』など、これまでの企画を小気味よく裏切る数々の新刊を発表、いずれも大成功となる。

さらに今年はじめには、大ヒット漫画『宇宙兄弟』とのコラボ版として、同作品の作中舞台をめぐりながら、作品の世界観と宇宙旅行を楽しむためのガイドブック『地球の歩き方 宇宙兄弟』も刊行、大ヒットとなった。

前代未聞のコラボ、「月刊ムー」と

そして3月、「世界の謎と不思議に挑戦するスーパーミステリーマガジン」を標榜する月刊オカルト情報誌「月刊ムー」(発行元は、Gakkenのメディアビジネス部門を前身とする出版社「ワン・パブリッシング」、編集長は三上丈晴氏)とコラボした『地球の歩き方 ムーJAPAN: ~神秘の国の歩き方』 が刊行された。

ちなみに2022年には『地球の歩き方 ムー-異世界(パラレルワールド)の歩き方ー超古代文明 オーパーツ 聖地 UFO UMA』 が刊行され、13万部の超大ヒットを記録している。

この刊行にも絡め、新井邦弘社長 と「月刊ムー」三上編集長の対談が4月25日、歌舞伎町のトーク・ライブハウスで行われた。
左から「月刊ムー」編集長 三上丈晴氏、地球の歩き方 新井邦弘社長、司会の坂東工氏(4月18日、新宿ロフトワンプラスにて)

左から「月刊ムー」編集長 三上丈晴氏、地球の歩き方 新井邦弘社長、司会の坂東工氏(4月18日、新宿ロフトワンプラスにて)

三上編集長は対談の中で、「オカルトに振り切った本、旅行ガイドに振り切った本はもちろん従来もあった。だが、『地球の歩き方』x「ムー」はいわば「混ぜるな危険」をやってのけた」と話した。本企画はいわば、禁忌とも思える「オカルトと旅行ガイドのコラボ」として初の試みなのだ。

新井氏は、「前回の世界版はテーマ別の編集だった、すなわち『ピラミッド』のページにはエジプトもメキシコも入っている。しかし今回の国内版は正統的な実用書に仕上げるために、『地域』で分ける編集をした。だから、青森県の新郷村に温泉旅行で訪れたつもりが、『あれ、キリストの墓が近くにあるらしい、寄ってみようか』となるかもしれない」と話す。
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文=石井節子

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