経営・戦略

2024.06.06 11:15

世界首位独走語学アプリDuolingo、CMOが語った広告哲学と「優先指標」

マスコットに「人格」を与える戦略

当初はDuolingoもほかの言語学習アプリと同様に、語学学習の利点を伝えるというようなマーケティング活動だったという。方針が転換されたきっかけは、Duoという名前の緑の大きなフクロウを会社のマスコットにして、企業の顔としてマーケティングに活用し始めたことだ。

「“学習サービスを売る”ということより、このマスコットに人格を与えてストーリーを作り、人々を楽しませようとした。これが非常にうまく行きました。人々に、Duoを見るたびにこのブランドを思い出してもらおうとしたんです」

レッスンをしないユーザーを追いかけ回すクレイジーさや、人々を笑わせるユーモア、そして何より親しみやすさ。同社はDuoに人間らしい「人格」を与え、TikTokなどのソーシャルメディアで動画を展開していった。それがファンエンゲージメントを高め、ユーザー数の獲得につながっていったという。Duolingoはこの方針を加速化し、ソーシャルメディアファーストの戦略を導入することにした。

「お金をかければ、簡単にメディアでインプレッションを確保することができる。しかし、ただで獲得するのは難しい。そのためには、人が楽しめるような、共有したくなるような面白いコンテンツを作ることが重要になります。ですので、我々はクリエイティブなレンズを通してマーケティングを行っています」

そのもっとも良い事例が、2023年のスーパーボウルの5秒間のスポット広告だ。米国最大のスポーツイベントであるNFLスーパーボウルは、多くの企業が何百万ドルも使って30秒のスポットを買う。だがDuolingoは、たった5秒を最大限活用した。マスコットDuoのおしりからもう一羽のDuoが出てきて、“do your duolingo(Duolingoをやれ)”とレッスン受講を促す、というこのおかしなアニメーション広告は、視聴者に強烈なインパクトを残した。それに加え、広告の放映のすぐあと、米国の200万人に対してスマホのリアルタイムのプッシュ通知を行った。これが再エンゲージメントにつながり、アプリのリアクティブ率は25%に上ったという。

この広告は、いかにクリエイティビティを活用して人々に話題をもたらすかに成功した完璧な事例だ、とオーサード氏は言う。

また、ローカルマーケティングの一例として、日本でのキャンペーンが挙げられた。2024年2月に渋谷で行われた「胴上げ祝い」キャンペーンである。Duolingoのレッスンを毎日継続しているユーザーをマッチョなDuoたちが胴上げしてお祝いする、というもので、かけた費用は少ないものの、SNSでバズらせることができたという。

ただ、毎日のようにA/Bテストを行い、試行錯誤を繰り返していくということがマーケティングのコアにある、とオーサード氏。

「多額の投資をするのではなく、小さいところから始めて、仮説を立てながらどんどんと次のステップに進んでいく、それが今の自分たちの今の姿につながっています」

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文=宮崎沙綾 編集=石井節子

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