食&酒

2024.06.04 11:15

麻布台の人気ピザレストランが「ただならぬ」メニューブックをつくるワケ

雑誌のようなつくりのメニューブック“4P’s Dictionary”

もうひとつ、このメニューから見えてきたことが、Pizza 4P'sの会社としてのグランドデザインだ。私は「カンパニーストラクチャー」と呼んでいる。
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Pizza 4P'sは2011年にベトナムで創業し、現在はカンボジア、インドなど世界で32店舗を展開している。「Make the World Smile for Peace」というビジョンのもと、各国のコンディションや課題感によって国ごとのコンセプトを設けているのが独特だ。

メニューブックのページをめくって最初に目に入ってくるのが、「ONENESS-Earth to People-」という東京店のコンセプト。先進国の中で圧倒的に幸福度が低く自殺率が高い日本で、「私たちは幸せだ」と思えるきっかけづくりをしたい。日本で店を開く意義についてこのように語られている。

ほかにも、カンボジアは「ゼロ・ウェイスト」、インドは「ONENESS in Diversity」だそうだ。Pizza 4P'sという企業の構造として、一番上にビジョンがあり、各国で展開するコンセプトがある。これはビジョンに対して本気に向き合い、達成のために何が必要なのかを本気で考えているからこその仕組みなのだと推測できる。
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循環について学んだ後、店内にある菜園でハーブを摘み、それをのせたオリジナルのピザをつくるワークショップを開催。

循環について学んだ後、店内にある菜園でハーブを摘み、それをのせたオリジナルのピザをつくるワークショップを開催。

店内でチーズ作りの工程を実際に見ることができるチーズ工房について、メニューブックでは「エデュテインメント(エデュケーション×エンターテインメント)」と表現している。この「エデュテイメント」という言葉は創業者である日本人のオーナー夫婦が考案したそうだが、チーズ工房を作るにあたって、便宜上作られた言葉ではないことも、読み進めるうちに分かってくる。

創業地であるベトナムの店舗では、子どもたちが生態系の循環を学べるエデュテインメントを意識したアクアポニックス(編集注:水産養殖と水耕栽培を組み合わせたシステム)を導入し、ワークショップも開催している。付け焼き刃ではなく、長年に渡りさまざまな形で施策を積み上げてきたからこそ、ライフスタンスが滲み出てくるのであろう。
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構成=堤 美佳子

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