現在、世界の69歳以上の14%が日中の最高気温が37.5度という危険な閾値を超える地域に住んでいる。「気候変動は高齢者の健康と福祉に悲惨な結果をもたらす可能性がある。暑熱の激しさや持続時間、頻度が増すことは健康や生命を維持する上で直接的な脅威となる。高齢者は熱中症や心血管疾患など暑さにさらされることで悪化する一般的な疾患の影響を受けやすいため、特に深刻な結果がもたらされる」と説明している。
「2017年のハリケーン『イルマ』による大規模停電にともなう米フロリダ州の老人ホーム入居者の熱関連の死亡、2022年8月の熱波による欧州21カ国での数千人の高齢者の死亡、2015年のインドとパキスタンでの熱波による3500人の死亡(大半が高齢者)のような悲劇は、気候変動による気温上昇がもたらす脅威を浮き彫りにしている」とも指摘している。
2021年に11億人だった世界の60歳以上の人口は、2050年には21億人に増えると予想されている。そのうちの3分の2は低・中所得国に居住する。そうした国々では気候変動による熱波が発生しやすいだけでなく、高齢者は経済的に恵まれず、冷房などを利用できない風通しの悪い家に住んでいる可能性がかなり高い。
「すべての地域で69歳以上の人口は増加する。これは世界人口の高齢化に関する過去の研究と一致しているが、高齢者はアフリカやアジア、南米など主に南半球の低所得国に集中している」と研究論文の筆頭著者でイタリアのCMCC財団のジャコモ・ファルチェッタらは分析。「アジアでは、高齢者の多さと暑い気候のため、高齢者が暑熱にさらされるレベルは他地域の4倍近くに達する」とみている。
研究ではまた「高齢者が暑熱にさらされる累積量は、2050年までにすべての大陸で少なくとも3倍になる。欧州と北米の温暖な国々では、気候変動がこうした変化の主要な原因となる。アフリカやアジア、南米の気温の高い国々では高齢化が決定的な要因となる。アフリカはまた、総人口の増加が最も大きな影響を与える地域でもある」と指摘した。
さらに著者らは、気候変動に対処し、健康的に歳を重ねられるようにするためには今後10年間が「極めて重要」になると説明している。熱関連の死亡を防ぐための策の1つは、政府などが建物内のエアコンやその他の冷却技術の普及を優先させることだという。ここには、都市部のヒートアイランド現象を防ぐために、都市部やその周辺で緑地や木陰を増やすことも含まれる。その他にも、暑さに用心するよう呼びかける早期警報システムの拡充や、無料で利用できる公共の冷房スペースの提供を推奨している。
(forbes.com 原文)