SKグループの投資部門であるSKネットワークスは、4月に発表されたアップステージの7200万ドル(約113億円)のシリーズBラウンドを主導した。このラウンドの他の投資家には、SBVA(旧ソフトバンク・ベンチャーズ・アジア)や未来アセット・フィナンシャルグループ、新韓ベンチャー投資、カンパニー・K・パートナーズらが含まれている。
アップステージの累計調達額は1億ドル(約157億円)を突破し、韓国で最も資金力のあるAIソフトウェア・スタートアップになったと同社は述べている。このラウンドにおける評価額は非公開となっている。
ネイバーでAIチームを率いていたソン・キムが2020年に共同創業したアップステージは、ChatGPTのような生成AIツールの原動力となる技術の大規模言語モデル(LLM)の開発を支援している。キムはインタビューの中で、タイの通信会社向けにタイ語の言語モデルを構築していると語った。その他にも約100社がアップステージのLLMを使用中で、さらに200社がカスタムモデルの構築について交渉中だと彼は付け加えた。
時価総額ベースで韓国第2位のコングロマリットであるSKグループからの出資は、多くの可能性につながるとキムは述べる。「巨大企業であるSKグループには、多くのLLMのニーズがある。さらに、同社はさまざまな企業に巨額の投資をしており、それらの企業も当社の潜在的な顧客だと言える」
この発言には、SKグループ側も同意している。SKネットワークスでCFOを務めるユ・ボンウンは、「アップステージの技術は、当社の事業の中でも、特にアンコールとのシナジー効果への期待が大きい」とコメントした。ソウルを拠点とするデータサービス・コンサルティング会社のアンコールは、昨年10月に約7000万ドル(約110億円)でSKグループが買収した企業だ。
SKグループの家電やホテル事業とのシナジー
SKネットワークスはまた、家電メーカーのSKマジックやホテル運営事業者のウォーカーヒルを含む、グループ内のさまざまな部門にAIソリューションを導入しており、その取り組みを通じて、アップステージとの協業の可能性を模索している。アップステージの技術は、例えばAIを搭載したSKマジックの新型家電の製造に利用できる。また、ホテル事業のウォーカーヒルでは客室のIoT機能(宿泊客が音声コマンドで照明や冷暖房を操作する)やAIコンシェルジュなどのユースケースが想定できる。
SKグループは最近、AIに集中するためにレンタカー事業などの非中核資産を売却しており、4月には米国シリコンバレーにAIラボを開設した。
同グループの傘下には、世界第2位の売上高を誇るメモリー・チップ・メーカーのSKハイニックスがある。過去1年間で株価が2倍になったSKハイニックスは、3月にAI向けチップセットで使用される次世代型の広帯域幅メモリーチップの量産を開始したと発表した。
「SKグループはAIの未来の信奉者です。だからこそ私たちは多くの支援を得ることができたのです」とキムは語った。
(forbes.com 原文)