海外

2024.05.29 14:00

故ジョブズの妻も出資するAI新興、米Coactive AIの独自性

(C)COACTIVE

現代の企業は、マーケティング・キャンペーン用の動画から顧客が共有した画像まで、膨大な量のビジュアルデータを管理している。これらのデータを分類・分析するために、企業はこれまで人間のレビュアーやデータ・ラベリング・サービスに依存してきた。しかし、カリフォルニア州サンノゼを拠点とする人工知能(AI)スタートアップのCoactive AI(コアクティブAI)は、顧客が保有する膨大なビジュアルコンテンツの意味を理解できるAIソフトウェアでこれらの作業を置き換えようとしている。

コアクティブAIの共同創業者兼CEOのコディ・コールマンは、このサービスに対するニーズは非常に大きいとは話す。彼によると、同社の顧客である大手小売企業は、膨大なライブラリの中から商品画像を探し出す手間を省くため、費用を払って新たに画像を撮り直すことがよくあるという。

コアクティブAIは米国時間5月21日、シリーズBラウンドで3000万ドル(約47億円)を調達したと発表した。このラウンドは、故スティーブ・ジョブズの妻、ローレン・パウエル・ジョブズが設立したエマーソン・コレクティブと、タスクラビット元CEOのステイシー・ブラウン・フィルポットが設立した投資会社の主導によるもので、他にはアンドリーセン・ホロウィッツやベッセマー・ベンチャー・パートナーズ、グレイクロフトなどが参加した。

このラウンドにおけるコアクティブAIの評価額は2億ドル(約314億円)に達した。ピッチブックによると、2023年3月時点での同社の評価額は5000万ドル(約78億円)だった。

コアクティブAIのソフトウェアは、既製品のAIモデルをベースに、画像や動画を正確に識別してラベルづけできるよう手を加えたものだ。同社によると、このソフトウェアはビジュアルコンテンツを検索するだけでなく、顧客の安全ガイドラインに違反するコンテンツを正確に発見できるため、コンテンツのモデレーション(監視)にも応用できるという。wikiサイトのホスティングサービスを提供するFandom(ファンダム)は、サイトにアップロードされた画像や動画を人力でレビューすることを止め、コンテンツのモデレーションツールとしてコアクティブAIを採用したと発表した。

コアクティブAIを創業したコールマンは刑務所に収監されていた母親のもとに生まれ、極度の貧困の中で育ったとCBSニュースのインタビューで語っている。彼にとって、コンピュータは厳しい環境から逃避する術であり、幼少期から夢中になったという。大学への進学は、手の届かないことのように思えたが、ある教師の助けによってマサチューセッツ工科大学(MIT)に進んだコールマンは、コンピューター・サイエンスの学士号と修士号を取得し、スタンフォード大学で博士号を取得した。そして、スタンフォード在学中、イーベイの元データサイエンティストであるウィリアム・ガビリア・ロハスとともにコアクティブAIを設立した。

顧客は「テック業界以外」の大手

コンテンツモデレーションの問題で批判にさらされているフェイスブックなどのテック大手は、社内のAIエンジニアを使ってコアクティブAIと同様のツールを構築している。これに対し、コアクティブAIがターゲットにしているのは、モデレーションやデータのラベルづけに大きなコストを掛けたくないと考えるテック業界以外の大手企業だ。
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編集=上田裕資

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