ドップラー効果や周波数のミスマッチを乗り越え──
同社はアレックス・ハロ氏、ベン・ワイルド氏、ジョン・キム氏によって2021年に設立された。宇宙との接続に成功した同社であるが、当初は、ブルートゥース接続が近距離でも頻繁に問題を起こすことから、成功への道程には暗雲が立ち込めていた。ベン・ワイルド氏はIoT業界での経験から、既存のものへの限界を感じていた。
「ブルートゥースチップから直接信号を送信し、600km以上離れた宇宙空間でも受信できると示すことで、我々の挑戦は不可能だと言っていた何千もの人々をあっと言わせることができたんです」と、ハッブル社のハロCEOはプレスリリースでこう述べた。
ハッブル社が他社と明らかに異なるのは、市販の3.5mm厚のブルートゥースチップをソフトウェアのアップグレードで強化し、低消費電力のブルートゥース接続を利用した点にある。これらのチップは、「フェーズドアレイアンテナ」を介して宇宙空間をまわっているハッブルの衛星と通信し、地上の機器からの低電力信号を補うことが可能だ。ドップラー効果や周波数のミスマッチといった技術的なハードルを乗り越えることで、同社は信頼性の高い長距離通信を実現した。
土壌モニタリングや高齢者の健康モニタリングなどへの応用も
同社は、バッテリーの消耗と運用コストの大幅な削減をミッションとして掲げる。そして自身を、様々な業界にわたって「世界中の何十億もの機器を接続する組織」として位置づけ、革新的な技術を用いて、消費者向け機器、建設、物流、農業、防衛など多くの分野を変革することを目指している。「世界規模で、コストパフォーマンスが高く、バッテリー効率の高い世界初のネットワークをつくるという我々の使命は、この技術で大きな前進を遂げたと言えるでしょう」とハロ氏は付け加える。
ハッブル社の段階的な計画には追加衛星の打ち上げも含まれており、2025年後半から2026年前半までに合計32基の衛星の打ち上げを目指している。この野心的な計画により、ハッブル衛星とのブルートゥース接続が1日に複数回可能になり、土壌モニタリングや高齢者の継続的な健康モニタリングなどの応用が容易になる。
「ブルートゥース機器は年間50億台近く販売されています。我々のネットワークで、世界規模の接続は、アクセスしやすいものに、また、低消費電力で、手頃な価格で使えるようになるのではないでしょうか。我々の成功は、多くの分野にまだまだ大きな影響を与えるかもしれません」とベン・ワイルド氏はプレスリリースで述べている。
ハッブル社はグローバル通信インフラをより確固たるものにする方法も模索中という。この画期的なテクノロジーが世界中の産業界に前例なきイノベーションを起こし、「接続の新時代」到来を告げたことはおそらく間違いない。
※本稿は英国のテクノロジー特化メディア「Wonderfulengineering.com」2024年5月5日の記事から翻訳転載したものである)