フランス・パリで開催されたオープンイノベーション・カンファレンスの『VivaTech 2024』にビデオで登壇したマスクは、「私自身もテスラも、この関税を要求していなかった」と語り、バイデン政権の発表に驚いたと述べた。
彼は、テスラが中国市場で「かなり良い競争をしている」と述べ、この件に限らず一般的に、EVやガソリン車に対する関税や税制優遇措置には反対だと語った。マスクはまた、「自由な貿易を妨げたり市場を歪めたりする行為は好ましくない」と主張した。
マスクのこの発言は、今年初めに彼が中国のEVに対する警告を発し、政府の介入を求めているように思えた発言からの転換と言える。1月のテスラの決算発表の際、マスクは中国のEVメーカーが「世界で最も競争力のある自動車会社」であり、「関税や貿易障壁がどのように設定されるかによって、世界的に大きな成功を収めるだろう」と述べていた。
その当時、マスクは「貿易障壁が無ければ、彼らは世界中のほとんどの競合をほぼ壊滅させるだろう」と警告していた。中国はテスラにとって最大の外国市場であり、同社は比亜迪(BYD)や上海蔚来汽車(NIO)などの中国メーカーとの競争に直面している。マスクは、近年これらの会社を称賛し、「大いに尊敬している」と述べ、「テスラに次いでグローバルなEV競争で2位になる可能性が最も高いのは中国のどこかの会社だ」と述べていた。
マスクはまた、この関税がテスラにとって低価格モデルを推進する上での青信号となるか、そしてその発売スケジュールについてもカンファレンスで質問された。しかし、彼は詳細を明かすことを拒否し、会社の株価に直接影響を与える質問に答えることが嫌いだと述べた。
マスクのコメントは、同社による低コスト車の開発計画の行方について憶測が広がる中で出されたものだ。ロイターは先月、テスラがより安価なEVの開発を中止し、自動運転タクシーに焦点を移していると報じていた。マスクはその報道を否定し、「ロイターはまたもや嘘をついている」とX(旧ツイッター)に投稿したが、詳細は明かさなかった。マスクは以前から約2万5000ドル(約390万円)のEVを発売すると述べており、以前には、2025年後半にもそのモデルを市場に投入したいと語っていた。
バイデン大統領は14日、中国から輸入されるソーラーパネルや鉄鋼、バッテリー、半導体などへの関税を引き上げると発表した。主要な動きは、EVに対する関税を25%から100%に引き上げることだった。ホワイトハウスは、これらの関税が中国の不公正な貿易慣行や知的財産の盗難、そして「意図的に価格を引き下げた製品の輸出で世界市場を氾濫させる」慣行に対抗するために必要だと述べていた。
(forbes.com 原文)