物流分析会社のXeneta(ゼネタ)で世界中の空輸貨物の出荷を追跡しているニール・ファン・デ・ワウは、今から9カ月前、Temu(ティームー)という中国企業の名前を聞いたことがなかった。
しかし、この中国のEコマースサイトは瞬く間に、急成長する競合のSHEIN(シーイン)と共に、米国の消費者の間で人気となり、中国からの航空輸送の価格を急上昇させた。「こんな事態は、誰も予測していなかった。この2社の出荷量は、世界最大の貨物運送業者と同等とも言える異様なレベルだ」と彼は語った。
ティームーは、主に衣類や家庭用品を販売している。一方のシーインは、ファストファッションを基盤としながらも、電子機器や台所用品にも進出する。これらの企業は、無名の中国企業が製造した製品を直接販売している点で、他の小売業者とは異なる。低コストの一因は、これらの製品を中国からダイレクトに出荷していることにある。
中国発の航空貨物運賃は2倍に
しかし、顧客に商品を適切な時間で届けるために、両社は空輸に大きく依存している。ティームーとシーインは、毎日約9000トンの貨物を世界中に出荷しており、これは約88機のボーイング777型フレイターの輸送量に相当すると、航空コンサルティング企業は述べている。このため、空輸の価格はほぼ前例のないレベルにまで上昇している。ゼネタの最新の報告によると現在、中国南部から米国への5月の空輸の平均スポットレートは1キログラムあたり約4.75ドルで、昨年末以来の最高値に達しており、ホリデーシーズンのピーク需要に匹敵している。この価格は、2019年同期間の運賃である2.32ドルの倍以上だ。アナリストは、この上昇が主にティームーとシーインによるものだと述べている。
この状況に対応するため、一部の物流および航空会社は成長を見越してフライトを追加することさえ始めている。たとえば、米国のAtlas Airは今春、中国の船会社YunExpressと提携し、2機目の航空貨物機の運航を開始すると発表した。
「シーインとティームーは、空輸に対してこれまでに見たことのない継続的な渇望を示している」と、ゼネタのアナリストはフォーブスに語った。この急成長は、世界の輸送ルートにも影響を与えている。ティームーは、台湾、日本、韓国経由で米国への新たな海上および航空ルートを開始し、「従来の貿易パターンを変えている」と、台湾の船会社のDimercoは述べている。