北米

2024.06.05 13:30

大学紛争の再来か

このようなキャンパスにおける学生の抗議活動を見ていると、1968年に世界に吹き荒れた大学紛争の嵐を思い出してしまう。フランスでは、新左翼の学生により、「五月革命」と呼ばれるような激しい抗議運動が繰り広げられていた。アメリカでは、おもにベトナム戦争反対の学生から、多くの大学で抗議活動が繰り広げられており、一部は過激化してキャンパスの外でも警官隊と衝突していた。1968年の大学紛争の時も、実はコロンビア大学が先陣を切っていた。もっとも、カリフォルニア大学バークレー校の抗議活動のほうが有名となった。
 
そして日本でも1968年の大学紛争では多くの大学で、多くの建物が学生によって占拠され、大学は授業もできず機能不全に陥っていた。日本では、中国で起きていた文化大革命に共鳴する学生も多く、権力への反対闘争を正当化していた。
 
日本の大学紛争は、東京大学が、1969年1月18〜19日に機動隊を導入して封鎖解除を行ったことで山を越えたかにみえたが、(文部省の意向で)東京大学の入試は中止となり、多くの受験生を混乱に陥れた。現在のコロンビア大学をはじめとする全米の大学で起きている抗議行動が、1968年の規模と国際的な広がりをみせるとは思わないが、予断を許さない。5月15日の卒業式を無事行うことができるかが、現在の最大の関心事項である。(4月29日記)追記:5月6日、卒業式の中止が発表された。


伊藤隆敏◎コロンビア大学教授・政策研究大学院大学客員教授。一橋大学経済学部卒業、ハーバード大学経済学博士(Ph.D.取得)。1991年一橋大学教授、2002〜14年東京大学教授。近著に、『Managing Currency Risk』(共著、2019年度・第62回日経・経済図書文化賞受賞)、『The Japanese Economy』(2ndEdition、共著)。

文=伊藤隆敏

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年7月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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