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2024.05.23 17:00

認知機能の衰えない高齢者「スーパーエイジャー」 秘密は脳の白質にあった

Shutterstock.com

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年齢とともに認知機能が低下し始めることは周知の事実だ。友人の誕生日を覚えていられなくなり、眼鏡や財布をどこに置いたか忘れ、やがて思考がなまって物事を混同したり、まごついたりするようになる。年をとれば避けられない、自然のなりゆきである。
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──本当にそうだろうか?

米神経科学会誌ジャーナル・オブ・ニューロサイエンスに発表された新しい研究結果によると、「スーパーエイジャー」(super-agers、スーパー高齢者)と呼ばれるごく少数の幸運な高齢者たちは、実年齢が80歳を超えているにもかかわらず、脳の健康状態は50~60代と同等の水準を維持している。今回、スーパーエイジャーは同年代の一般的な人と比べて、記憶力や認知能力に関連する大脳組織である白質の減少が少ないことが明らかになった。

白質──脳の「幹線道路網」

私たちの脳は、灰白質と白質という2種類の組織で構成されている。認知に関する議論や研究でよく話題になり脚光を浴びるのは、灰白質である。灰白質はニューロン(神経細胞)が集まる脳の領域であり、学習、記憶、推論といった複雑な脳機能のコントロールセンターの役割を果たしていることから、これは驚くには値しない。

一方、白質は脳の奥深くに位置している。主な役割は、いわば広大な交通網のように、脳のさまざまな領域を相互に接続することだ。白質は、ニューロン間の通信(神経伝達)を可能にする電気的な信号(インパルス)を伝える連絡路として機能する。インパルスによって、指を動かす動作や足のつま先をぶつけた際の痛みなど、体の各部位の情報がニューロンに伝達される。
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認知機能の健康には、灰白質と同様に、白質も重要だという理解が次第に深まってきた。白質が減少して両者をつなぐ「道路網」がなくなれば、脳のさまざまな部位が適切に情報を共有したり、機能を調整したりできない。その結果、認知機能が低下してしまうのだ。

スーパーエイジャーの白質は減少しない

スーパーエイジャーと他の高齢者の違いを明らかにするため、今回の研究では80代の高齢者119人を対象に10年間にわたる追跡調査を行った。研究参加者の内訳は、スーパーエイジャーが64人、年齢相応の推理力を有する高齢者が55人だった。研究期間中に参加者は、記憶力と思考力のテスト、定期的な採血、複数回の脳スキャンを受け、運動習慣、食生活、喫煙と飲酒の有無など、生活習慣に関するアンケートにも答えた。

スーパーエイジャーと一般的な高齢者の主な違いは、白質にあった。一般的な高齢者の脳では、加齢とともに白質のかなりの部分が失われたが、スーパーエイジャーの白質は大きく萎縮することなく、その傾向は特に、記憶と密接に関係する領域である海馬と嗅内皮質で顕著であった。また、スーパーエイジャーは認知のさまざまな面に関与する前頭葉の領域間における接続性も良好だった。
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翻訳・編集=荻原藤緒

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