立会外分売とは、大株主が自分の保有する株を小口にして市場の取引時間外に不特定多数に売却すること。瀬戸は発行済み株式の約5%にあたる2775万5200株の売却を予定していた。
しかし、投資家の目は厳しかった。申込数604万100株で、予定売却数の約2割にとどまったのだ。
「知らせを見たときは、読み方を間違えたかと思いました。前回は募集に対して申し込みが超過していた。だから『逆でしょ。超過分が2割だよね?』と。確認してそうじゃないとわかったときはショックでした」
新規事業のchocoZAPが急成長し、23年11月から単月黒字化。24年3月期業績予想も上方修正し波に乗る同社にとって、立会外分売の結果は勢いに水を差す格好になった。
瀬戸は「自分の不徳の致すところ」と反省の弁を述べたが、その表情に暗さは見られない。
「売却で得たお金は全額また会社に出資して、より深く会社にコミットする予定です。出資するのは、成長に自信と覚悟があるから。株式市場は自分でコントロールできない要素が多いですが、リアルな事業はうそをつかない。自分たちがやれることに集中すれば、結果はついてくる」
つまずきをものともしない切り替えの早さはどこからくるのか。瀬戸の起業家人生を振り返ると、“失敗哲学”が見えてくる。
前身の健康コーポレーションを立ち上げたのは2003年。サプリ通販からスタートしたが、最初はまったく売れなかった。新聞広告に5万円で出稿するも空振り。ならばテレビだと、CS放送に20万円でスポットCMを流した。営業担当者が「100万円はすぐ売れる」と請け負ったが、電話は鳴らない。クレームを入れたら、1日の予定を30日間に延長してくれた。
「ただ、毎日流しても29日目までゼロ。最終日に1本問い合わせがありましたが、クレームを恐れた営業の方が裏で手を回したんでしょう(笑)」
失敗続きでもへこまないのはなぜか。瀬戸は持論をこう展開する。
「失敗は鉄アレイのようなもの。筋トレと同じで、一定のストレスを受けると鍛えられて耐性がつきます」
過去を悔やむより、今できることにフォーカスするのも昔からの流儀。今自分にあるものを洗い出すと、実家のパン屋でつくっていた豆乳とおからの自然食品が目に留まった。おからは胃のなかで膨らむ。ビタミンを入れてダイエットクッキーとして売り出したら飛ぶように売れた。
創業3年目に上場して、翌年には売り上げ100億円に達した。しかし、類似製品が出てきて売り上げが10億円に。月100万円の役員報酬も20万円になった。