とはいえ、日本が多彩な起業家とアントレプレナーシップであふれかえるためには、課題も多い。日本の起業文化はまだ発展途上にある。グローバル・アントレプレナーシップ・モニター調査による「起業活動の総合指数」を見ると、米国では20%近くの個人がなんらかの起業活動を行う一方、日本は6%に過ぎない。
『スタートアップとは何か』(岩波新書)の著者で、関西学院大学経済学部教授・加藤雅俊は「世界と比較すると起業活動と無縁な人たちが多い。人々が起業に関心を持つようにするためには起業に関する文化的・社会的な規範が変化していく必要がある」と話す。同調査によると、日本は起業活動と無縁な層が70%を超えるなど圧倒的に多い(米国20%程度、OECD平均30%強、韓国40%程度)という現実がある。
地球規模の課題解決、そして文化的・社会的な規範の変化──。これらはどちらも時間がかかり、どちらも「厄介な問題」だ。であるがゆえに、個人のビジョンを通して、さまざまな他者との出会いによる新しいコラボレーションをし、「わたしたちで、未来世代に対して、どのような経済社会をつくっていくのか」という問いに挑み続ける姿勢が必要なのかもしれない。だからこそ、昨年掲げた問いにエッセンスを加えたい。「未来世代のために、私たちがすべきことは今よりもたくさんあるのではないか」