上海に本社を置くコンサルティング会社Automobility(オートモビリティ)のCEOのビル・ルッソは、「この措置は、結果的に米国の自動車業界の競争力を阻害することになる」と述べている。中国で20年以上暮らしている彼は、クライスラーの北東アジアの責任者として中国に着任し、2017年にオートモビリティ社を設立した
「私は、米国の自動車業界の出身者として、政府のやり方に失望している。これでは、米国の産業が未来への競争に参加し続けることができない」とルッソは述べている。
彼によると、世界の自動車産業が石油に頼らない技術に移行していく中で、米国のメーカーは「ゆっくりと、しかし、確実に死んでいく」という。「米国企業は、化石燃料に依存するエコシステムから抜け出せなくなる」とルッソは述べている。
今回のホワイトハウスの発表は、中国の産業政策と貿易慣行に主眼を置くものだ。「中国のEV輸出は2022年から2023年にかけて70%増加したが、広範な補助金と非市場的な慣行は、過剰な生産能力につながるリスクがあり、その他の国の有効な投資を阻害しかねない」と米政府は述べ、「EVに対する100%の関税率は、中国の不公正な貿易慣行から米国の製造業者を守ることになる」と主張した。欧州委員会も中国のEV輸出を調査している。
自動車業界をハイテク産業と考えるべき
これに対しルッソは、米国に必要なのは、新たなテクノロジーへの投資を促し、コスト削減につながるような何らかのインセンティブを与えることだと述べている。「中国は、それをやることで、代替的な推進力を使用する自動車業界の競争をリードすることができた」と彼は主張している。中国の製造業者は特に、EVがコスト高になる最大の要因のバッテリーで強みを持つようになった。「BYDのような企業は、垂直統合型のバッテリーサプライチェーンを構築した。それこそが、米国やその他の国が、競争力のある自動車を製造するために必要なことなのだ」と、ルッソは続けた。ウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイが支援するBYDは、中国最大のEVメーカーとして知られている。
「米国の伝統的な自動車大手は、どのような視点から見ても、代替推進技術を含む未来への競争において競争力をもっていない。19世紀に発明された推進技術で21世紀を生き抜くことはできないのだ」と彼は述べている。ルッソはまた、米国の政府は、この問題を産業界に任せたり、現状を維持しようとしているように見えるが、これは「自動車産業の競争力を維持するために受け入れられる解決策とは思えない」と主張した。
中国からの競争に向けたプレッシャーは現在進行系で続いており、国際エネルギー機関(IEA)の新たなレポートによると、中国は10分で充電可能なEVバッテリーを開発した。
「米国は、未来のモビリティへの競争において、自動車業界を衰退が進むラストベルトの産業として見るのはなく、ハイテク産業として認識しなければならないのだ」とラッソは語った。
(forbes.com 原文)