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2024.05.22 09:30

シンガポール航空で乗客死亡 乱気流による死亡事故は極めてまれ

Getty Images

シンガポール航空の旅客機が21日、飛行中に激しい乱気流に巻き込まれ、73歳の乗客1人が死亡、数人が負傷した。乱気流で死者が出るのは極めてまれ。

シンガポールに向け、英ロンドンのヒースロー空港を発ったシンガポール航空の旅客機は離陸から約11時間後に激しい乱気流に見舞われ、タイの首都バンコクに緊急着陸した。この事故で18人が現地の病院に搬送されたほか、乗客1人が死亡した。

飛行記録によると、機体は高度3万7000フィートから4分間で高度約3万1000フィートまで降下したようだが、機体が降下した原因については現時点では明らかになっていない。同便に乗っていた乗客の1人は英ロイター通信の取材に対し、機体が上方に傾いたかと思うと突如劇的に降下し、シートベルトを着用せずに座っていた全員が天井に向かって投げ出されたと証言した。

乱気流は飛行中に予期せず発生することが多い。シートベルトを着用していない場合、乗客が突然前方に倒れて前の座席に衝突したり、上方に投げ出されたりしてけがをすることがある。

米国家運輸安全委員会(NTSB)によると、激しい乱気流で負傷事故が起きる可能性もあるが、乗客の大半はシートベルトを着用しており、操縦士は乱気流による深刻な事態を回避するよう訓練されているため、民間航空機で乱気流による死亡事故が発生することはまれだという。実際、2009年以降、乱気流による民間航空機の死亡事故は報告されていない。

同委員会は、2009~18年に発生した乱気流事故の負傷者の大半は客室乗務員だったと指摘。客室乗務員は乱気流発生中に乗客を介助しなければならず、シートベルトを着用していないことが多いためだと説明した。

米連邦航空局(FAA)は、2009~22年の間に民間航空機で乱気流による163人の重傷者が出たが、乗客の負傷者はわずか34人だったと報告した。NTSBによると、2009~18年に乱気流で負傷した乗客の割合は21%強だったのに対し、客室乗務員の割合は78.9%に上った。同期間に民間航空機で報告された負傷者の約3分の1は乱気流によるものだった。

昨年発表された研究では、激しい乱気流の発生件数が1979~2020年の間に北大西洋上空で55%増加したことが明らかになった。これは気候変動によって風力が増しているからではないかと考えられている。乱気流は2050~80年の間に世界中で大幅に増加すると予測されている。

FAAによれば、乱気流は激しい暴風に伴って発生することが多く、「晴天乱気流」と呼ばれる乱気流の最も危険な形態は、暴風域付近の気圧の変化によって引き起こされる。同局は、操縦士が警告なしに乱気流に突入するのはよくあることだと説明している。

昨年、米ホワイトハウスの元高官が自家用機でバージニア州に向かう途中、激しい乱気流に見舞われ死亡した。2022年、米ハワイアン航空の飛行中に激しい乱気流が発生し、36人の乗客が負傷。うち11人が入院した。2015年には中国・上海発カナダ・トロント行きのエア・カナダ便が乱気流に巻き込まれ、乗客21人が負傷した。うち8人が首や背中に軽傷を負い、13人が入院した。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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