2024.05.25 09:00

時差ぼけや暴飲暴食の特効薬? 休暇中に点滴を受ける人が増加中

Shutterstock.com

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旅行中の時差ぼけや暴飲暴食から回復する手段として、休暇中や帰宅後に点滴を受ける人が増えている。

カクテル点滴療法は一部の旅行者にとって、休暇中に少しばかり食べすぎても早く回復できる手段であり、罪悪感をおぼえることなく飲酒にふける方法なのだ。健康的な生活を送るための充電の一環として、プールサイドで点滴を受ける人もいる。

米紙ワシントン・ポストの記事にもあるように、かつて旅行者は、二日酔いのときは頭痛薬とサングラスに、時差ぼけになった場合はメラトニンサプリメントに頼るほかなく、あとは大量のカフェインと睡眠をとるくらいしか対処法がなかった。

しかし、今や点滴は、病院で治療に使用されるものにとどまらず、ウェルネス産業でも活用されるようになっている。旅行客向けに、ホテルの部屋やAirbnb(エアビーアンドビー)の物件まで注文に応じて点滴を届けるサービスさえある。

休暇中の点滴利用は新興のウェルネスサービスだが、医療目的でない点滴そのものは目新しい発想ではない。1960年代に米ボルティモアにあるジョンズ・ホプキンス病院の医師ジョン・マイヤーズが、栄養素を経口摂取するよりも注射するほうが効果的だと発見し、マイヤーズカクテルと呼ばれる点滴を開発した。疲労回復やアンチエイジング効果のある栄養成分を組み合わせたこのカクテル点滴は、現在さまざまな場所で提供されている。

シンクタンクのGlobal Wellness Institute(グローバル・ウェルネス・インスティテュート)によると、2023年時点でウェルネス点滴療法を提供するメディカルスパや点滴センターは世界に7000カ所ある。国際展開している企業も多く、たとえば英REVIVは約50カ国で事業を行っている。ホテルのコンシェルジュが気分のすぐれない宿泊客のために点滴を注文することは、もはや珍しくない。

二日酔いに効く点滴、胃腸トラブルやアレルギーを改善する点滴、エネルギー補給のためのビタミンB12点滴など、さまざまな点滴がある。

もっとも、財布にやさしいサービスではない。価格は1回150ドル(約2万3000円)程度から、ものによっては日本円で10万円を超える点滴もある。利用者の多くはサービスを受ける当日に予約をするが、休暇中なら無計画なのも当然だろう。

なお、大都市での利用については、ロサンゼルスなどでは長寿の効果が重視され、ニューヨークなどではエネルギー補給や免疫力向上のために点滴を予約する傾向がみられる。

点滴を打つのは多くの場合、看護師や資格を持つ専門家だ。ただ、(病院のような)厳格な規則のない環境での点滴は、滅菌の不十分な器具を使用することによる感染症や、副作用や合併症を引き起こすリスクがあるとして、カクテル点滴の流行を懸念する医療関係者もいる。たとえば、高濃度のビタミン注射は場合によっては腎臓に大きな負担をかけてしまう恐れがある。人体に必要なビタミンは微量だと主張する声も多い。

ワシントン・ポストが別の記事で指摘しているように、確実な方法の1つは、点滴キットが目の前で開封されるのを確認することである。念のため指摘しておくと、カクテル点滴療法は米食品医薬品局(FDA)の認可を受けておらず、休暇中に点滴を受けた場合は医療保険の対象にもならない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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