それでも、彼の野心はまだ尽きない。
「今後二度とラップを書かなかったとしても、俺はもうまっとうに稼げている。俺はそうなるためにキャリアを積み上げてきたんだ」(ガッティ)
これ以上を望んでいないというわけではない。むしろ、彼のメンターのひとりでビリオネア、ヒップホップ界の大御所であるショーン・“ジェイ・Z”・カーターに触発され、昨年12月からカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)アンダーソン・スクール・オブ・マネジメントでバリュエーションを中心に聴講し始めた。
「会社を買いたいと思うかもしれないからね」
ガッティは大学を出ていない。
「俺はしっかり頭に知識を詰め込んだ状態にしたいんだ。金融の専門家の話に頼らなくても、自分で専門用語や言い回しを理解したいからね」
ガッティにとって、企業や投資の価値評価は最優先事項だ。近年、投資家グループが音楽著作権に天文学的な額を支払うようになっているからだ。株式市場や企業データなどを提供するピッチブックによると、ボブ・ディランは20年に4億ドルで、ブルース・スプリングスティーンはその翌年、5億5000万ドルでそれぞれ全楽曲の著作権を売却している。ケイティ・ペリーやジャスティン・ビーバーといった若手アーティストも23年、2億ドル以上で自身の楽曲の著作権を売却した。
同様の提案があれば、ガッティもその手の話に乗るだろうか。
「それだとカッコよくないし、面白みに欠けるね。俺なら取引という考え方を超えてみせるさ。今、世代を超えた本物の富について考えているんだ。どうやったらウォルマート(ウォルトン家)のように永久的にお金をもてるのか、って」(ガッティ)