音楽

2024.05.26 11:00

ヒップホップ界で大注目の実業家は1億ドルの資産をいかに築いたのか

ガッティはCMGを経営する傍ら、MLSに所属するサッカークラブ、D.C.ユナイテッドの少数株を保有するほか、メンフィスのレストラン、プリベも所有する。フォーブスの試算では、それらすべての資産価値は約1億ドルに上る。

それでも、彼の野心はまだ尽きない。

「今後二度とラップを書かなかったとしても、俺はもうまっとうに稼げている。俺はそうなるためにキャリアを積み上げてきたんだ」(ガッティ)

これ以上を望んでいないというわけではない。むしろ、彼のメンターのひとりでビリオネア、ヒップホップ界の大御所であるショーン・“ジェイ・Z”・カーターに触発され、昨年12月からカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)アンダーソン・スクール・オブ・マネジメントでバリュエーションを中心に聴講し始めた。

「会社を買いたいと思うかもしれないからね」

ガッティは大学を出ていない。

「俺はしっかり頭に知識を詰め込んだ状態にしたいんだ。金融の専門家の話に頼らなくても、自分で専門用語や言い回しを理解したいからね」

ガッティにとって、企業や投資の価値評価は最優先事項だ。近年、投資家グループが音楽著作権に天文学的な額を支払うようになっているからだ。株式市場や企業データなどを提供するピッチブックによると、ボブ・ディランは20年に4億ドルで、ブルース・スプリングスティーンはその翌年、5億5000万ドルでそれぞれ全楽曲の著作権を売却している。ケイティ・ペリーやジャスティン・ビーバーといった若手アーティストも23年、2億ドル以上で自身の楽曲の著作権を売却した。

同様の提案があれば、ガッティもその手の話に乗るだろうか。

「それだとカッコよくないし、面白みに欠けるね。俺なら取引という考え方を超えてみせるさ。今、世代を超えた本物の富について考えているんだ。どうやったらウォルマート(ウォルトン家)のように永久的にお金をもてるのか、って」(ガッティ)

「もっとまともな道」を示す

ヨー・ガッティは、マリオ・ミムスとしてテネシー州フレイザー(ノース・メンフィス地区)で生まれ、3人兄弟の次男として育った。母親と3人の叔母は生活費を稼ぐためにドラッグを売っていた。父親は、刑務所を出たり入ったりしていた。手っ取り早く稼げる違法な暮らしは魅力的だった。母親のジェラルディンは、若いマリオに高級なものを与えていたと話す。高級百貨店で爆買いしたり、ボクシングの決勝戦を観戦するためにラスベガスへ旅行したり、ぜいたくの限りを尽くした。
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文=ジャバリ・ヤング 写真=ジャメル・トッピン 翻訳=中沢弘子 編集=森 裕子

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年7月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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