それから、その日の朝日をイメージして、「ニューヨーク・タイムズ」紙の1面をペイントする。
Shibuyaの「Sunrise from a Small Window」シリーズは、新型コロナウイルスのパンデミックによるロックダウンが実施された2020年に始め、毎日の習慣となったこの制作活動から生まれたものだ。薄い青から濃い青、ピンクがかった紫から濃いオレンジへと、変わり続ける空の色を同紙のトップページの上で、表現している。
インスタグラムに投稿しているそれらのペイントは、瞬く間に人々の関心を集めた。そして、Shibuya本人にとどまらず、多くの人に安心感や穏やかさ、そしてインスピレーションを与えるものとなった。
火事や洪水、ハリケーン、人為的災害、戦争、銃乱射事件、選挙結果、自然現象、世界的に重大な出来事、あるいは気楽な話題でも──その朝、一面で報じられたニュースの上にアクリル絵の具で朝の空をペイントすることは、その日のShibuyaの感情を抽象的に、そして色鮮やかに映し出すものとなっている。
以下、このプロジェクトに関するShibuyaの一問一答を紹介する。
──2020年4月、このシリーズの制作を開始したきっかけについて、聞かせてください。なぜ、ニューヨーク・タイムズ紙の1面を「キャンバス」に選ばれたのでしょうか?
ブルックリンの狭いアパートから出ることができなくなった。日々伝えられる悪いニュースを耳にするなかで、自分は打ちのめされることなく、「ニューノーマル(新たな日常)」に適応していくことはできるのだろうかと考えた。
何日かたって、スタジオの小さな窓から聞こえていた車のクラクションや、人の大声が聞こえないことに気が付いた。聞こえてきたのは、鳥の元気な鳴き声や、風で揺れる木々の音だった。
見上げると、明るくなった空は、その下にある世界が一変しても相変わらず美しかった。世界の混乱と、驚くほど美しい日の出のコントラストに、興味をそそられた。
新聞紙の一面に、その瞬間を記録することにした。ニュースがもたらす不安と静かで穏やかな空を対比させすることで、自分自身のニューノーマルを記録することに──。
「ニューヨーク・タイムズ」紙を選んだのは、ただ毎日読んでいる新聞だったから。そして、ニューヨークが私のホームになっているから。