この法案は、共和党の主導によるもので、米商品先物取引委員会(CFTC)を主要な暗号規制当局に昇格させ、市場のどの分野を米証券取引委員会(SEC)が監督するかを切り分けるものだ。それと同時に、リスクの高い行為に対するガードレールを設定し、暗号資産の保管や企業が破産した場合の消費者保護を強化する。
この法案を支持する取引所のコインベースとクラーケン、投資家のアンドリーセン・ホロウィッツらを含む連合体のCrypto Council for Innovation(クリプト・カウンシル・フォー・イノベーション)は、公開書簡で「この法案の成立は、ブロックチェーン技術とデジタル資産の成長を加速させ、金融包摂を促進し、国家安全保障を強化する」と述べている。「米国が金融イノベーションにおけるリーダーシップを維持することは極めて重要だ」と彼らは指摘した。
一部の暗号資産企業は、明確な規制が存在しないことを理由に米国から撤退すると脅しており、金融業界のリーダーたちも、暗号資産の金融商品の市場参入ルートが認められていないと不満を漏らしている。
SECの規則を覆す決議案が可決
一方、米議会上院は16日、ウォール街の大手銀行などが顧客の暗号資産を保管することを妨げていたSECの暗号資産会計ルールである「SAB121」を覆す規則案を賛成多数で可決した。この決議は下院でも可決済みで、両院で成立したことになる。しかし、バイデン大統領は、この決議が一部の民主党議員からも支持されているにも関わらず、拒否権を発動する可能性が高いとされている。ニュースレターCrypto is Macro Nowの著者であるノエル・アチソンは、「これは大事件だ」とメモに書いている。「この決議は民主党内の分裂の深まりを示唆する政治的シグナルのように感じられる」
バイデン大統領は、この法案に拒否権を行使するか、署名するかを今後10日以内に決めなければならない。もし拒否権を行使できなければ、大統領の署名なしに法案は成立することになる。
ワイオミング州選出の共和党議員で、上院で決議案を推進したシンシア・ルミス上院議員は、「この決議は金融イノベーションの勝利であり、バイデン政権とゲイリー・ゲンスラーSEC委員長が暗号資産をどのように扱ってきたかを明確に非難するものだ」と声明で述べた。
SAB121は、暗号資産を保管する企業に対し、それらの資産を自社の貸借対照表に負債として計上するよう義務付けるもので、従来の会計慣行から逸脱しており、仮想通貨の保管コストが法外なものになると批判されてきた。この規則は、1月にウォール街のビットコイン上場投資信託(ETF)が承認され、ブラックロックのような大手が巨額の手数料支払いを求められる可能性が出てきたことで、注目されていた。
(forbes.com 原文)