アート

2024.06.22 15:00

アートで世界の「声」を届ける|今月のアートな数字

フール・アル・カシミ◎UAE出身。シャルジャ美術財団理事長兼ディレクター、国際ビエンナーレ協会会長

企画展、芸術祭、フェア、コレクションなど多彩な話題が飛び交うアートの世界。この新連載では、毎月「数字」を切り口におすすめの話題をお届けしていく。初回の数字は「2025」。一層の国際化を目指す芸術祭について取り上げる。

2025年は、大阪・関西万博の年だ。時を同じくして、20年前の万博開催地である愛知では、国際芸術祭「あいち2025」が開催される。2010年から3年ごとに開催されている「あいち」は、今年で6回目。2019年の展示のひとつ「表現の不自由展・その後」の騒動が目立ったが、毎回、国内外から約100組のアーティストが参加し、約60万人の来場者を迎えながら発展してきた。
 
歴代、日本人が芸術監督を務めてきたなか、今回初めて海外から選任。アラブ首長国連邦(UAE)シャルジャ出身のフール・アル・カシミがその役を担う。背景には、外からの新しい視点で「あいち」の国際的なプレゼンスを高めたいという狙いがある。

「あいち」のプログラムは現代美術に限らない。2022年には、ミニマル・ミュージックの創始者といわれる米国の作曲家スティーブ・ライヒのコンサートも開かれた

「あいち」のプログラムは現代美術に限らない。2022年には、ミニマル・ミュージックの創始者といわれる米国の作曲家スティーブ・ライヒのコンサートも開かれた

1993年から開催される中東最大の芸術祭「シャルジャ・ビエンナーレ」に影響され、大学でアートを学んだカシミは、2003年から同ビエンナーレにかかわり、2009年にはシャルジャ美術財団を設立。世界有数の美術館のボードメンバーも務めながら、中東と世界のアートをつなぐ支援者として活躍している。

注がれる期待に対して「無数のアイデアがある」と微笑む彼女が大切にしているのが、複数の視点で芸術祭を構成することだ。「子どもなら何に興味をもつ? アーティストが求めるものは? キュレーターなら何をしたい? そのうえで音楽、舞台芸術、ラーニングなど多様なプログラムを展開し、誰もが何かを得られる形を実現します」。
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文=鈴木奈央 書=根本充康

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年6月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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