ヘルスケア

2024.05.21 15:00

大麻合法化のカナダ、高齢者の大麻中毒による救急外来が3倍に

Getty Images

カナダで大麻の小売販売が合法化されて以降、大麻中毒で病院の救急外来を受診した高齢者の数が3倍に増加した。医学誌「米医師会紀要(JAMA)」に20日掲載された論文から明らかになった。

カナダ中東部オンタリオ州の65歳以上の高齢者を対象に、2300件以上の大麻中毒による救急外来を分析したところ、同国で乾燥大麻や食用大麻の販売が合法化されて以降、それ以前に比べて受診者数が大幅に増加したことが示された。大麻中毒による救急外来の受診者数は、カナダが2018年に乾燥大麻の販売を合法化してから14カ月間で2倍に増加。2020年に食用大麻の販売が合法化されてから2年間で3倍に膨らんだ。

研究者は、高齢者は他の薬を服用している場合が多いため、薬物が相互作用を及ぼす可能性が高く、大麻中毒になる危険性も高くなると説明。大麻製品の入手のしやすさや誤飲が救急外来の増加につながっているのではないかと指摘している。

今回の研究は救急外来のデータに基づいているため、大麻中毒でも病院を受診しない高齢者の数はこれより多いことも考えられる。また、調査対象期間は新型コロナウイルスの流行期を含んでいるため、大麻中毒を患っていても医療機関を受診できなかった高齢者がいた可能性もある。

カナダ統計局によると、同国で大麻を消費する年齢層として最も拡大しているのが65歳以上の高齢者だという。大麻を使用したことがあると回答した高齢者の数は、2012年には約4万人だったのに対し、2019年末までに40万人以上に急増した。米国では2017~20年にかけて、65歳以上の高齢者の約15%が大麻を使用したと答えている。

保健当局は近年、高齢者による大麻使用を懸念するようになっている。大麻中毒の症状には、めまい、錯乱、吐き気などがあるが、症状が重くなると、せん妄や強い恐怖感、不安などが現れる。大麻中毒の長期的な影響として、統合失調症などの精神病の悪化や心拍数の急激な上昇などを指摘する研究もある。重症の大麻中毒で入院した場合、ジアゼパムのような精神安定剤が投与されることもあるが、治療が必要になることはまれ。

2020年の調査によると、米国では50歳以上の成人による薬物管理センターへの大麻関連の通報は、2009~19年の間に18倍に増加した。2023年の米カリフォルニア州の入院に関する調査では、65歳以上の高齢者による大麻使用関連の救急外来受診率が、2005年の10万人当たり20.7人から2019年には10万人当たり395人に拡大したことが明らかになった。カナダ政府は、大麻製品は1980年代に比べて平均で4倍強力になっており、高齢になるほど誤飲のリスクが高く、大麻の副作用の危険性も増すと警告している。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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