アジア

2024.05.21 10:00

中国政府の「不動産購入補助金」策、経済浮揚にはほど遠く

立ち並ぶ中国・天津の集合住宅(Shutterstock.com)

中国政府は7月に北京で開催される中国共産党の「中央委員会第3回全体会議(3中全会)」を待たずに、今なお続く不動産危機の最新の対策を発表した。

今回の対策はこれまでの試みをはるかに超える内容だ。そうした意味では実に歓迎すべき動きだ。2021年に不動産危機が始まって以来、政府はほぼ無為無策だった。だが今回の対策がこれまでの措置を上回るものだとしても、その規模はニーズに対してあまりに小さく、さらには不動産部門に新たなリスクを持たらす。経済問題の解決に向けて中国が歩む道のりは長い。

最新策では中国政府は約1兆元(約21兆5800億円)の超長期特別国債を発行する計画だ。地方政府が全国各地で売れ残っているアパートなどの住宅を購入する資金となる。そして地方政府が購入した住宅は低・中所得者向けの手頃な住宅として活用される。これらの住宅の購入を促進するため、頭金の最低額と個人向けのローン金利を引き下げる。

こうした措置は、政府が昨年とったわずかな対策や、昨年までの無策をはるかに上回るものだ。当局は政府による住宅購入で膨大な数の売れ残り物件が一掃され、不動産価格の下落圧力が緩和されることを期待している。また、国民の住宅購入意欲が回復し、消費者信頼感と消費水準が上向くと大胆にも主張している。

政府の取り組みは表面的には印象的だが、同国が抱える問題の前ではかすんで見える。中国には現在700万戸の未入居住宅があると推定されており、この数には販売済みながら完成していない住宅は含まれていない。未完成と未入居の住宅を合わせると推定2000万〜3000万戸に達する。

このような現実を考えると、まず3000億元(約6兆4700億円)を投じる政府の対策は実に小さいようだ。仮に予定している1兆元すべてが明日、市場に投入されたとしても、供給過剰を少しでも改善するのに必要な額にははるかに及ばないのは明らかだ。おそらく当局は、最初の資金投入の効果を見極め、うまくいけばさらに追加の措置を講じるつもりだろう。そのような計画は確かに前向きなものだろうが、現状では政府の目標にはまだ程遠い。
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翻訳=溝口慈子

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