さらに根本的な問題は、住宅供給全体についての疑念だろう。対策では低・中所得者層が新たに住宅を購入する際に空き家となる、それまで住んでいた物件をどうするか何の計画もないようだ。そうした住宅を取り壊すという話もない。新築の売れ残り住宅を販売しようとする大掛かりな取り組みが、新たに空くことになる、そしておそらくまだ使用できる中古住宅が市場にあふれることにつながる可能性は十分にある。
また、政府が期待しているように、この対策で世帯が財布の紐を緩め、現在よりも消費が堅調に拡大するかははっきりしない。結局のところ、不動産への不安は中国の消費者が支出を控えている理由の1つに過ぎない。長年の不動産問題で中古住宅の価格は大幅に下落し、家計の資産を大きく目減りさせている。4月時点でも住宅価格はまだ下落を加速させており、前年同月比で3%以上の下落となった。どんなに効果的な対策でも、こうした状況を好転させるにはかなりの時間がかかる。その間、世帯は消費より貯蓄志向が強いままだろう。
また、2023年初めまで政府が続けたゼロコロナ政策の「負の遺産」もある。検疫やロックダウン(都市封鎖)によって経済がいったん停止して再開したことで、人々は安定収入が得られるのかどうか不安に思うようになった。この不安感は徐々にしかなくならない。消費動向を示す小売売上高は4月に前年同月比2.3%増となったものの減速傾向にあり、政府が望むようなすばやい回復はほぼ見られなかった。
2022年まで対策は皆無で、2023年の取り組みもわずかだったことから、同国政府による今回の措置は不十分であっても実に歓迎すべきものだ。だがそれは中国が抱える経済・財政問題の「解決」にはほど遠い。中国共産党が国民に約束したような繁栄への道に戻るには、政府は今回以上の取り組みを行い、これまでに行ったこと以外の対策をとる必要がある。
(forbes.com 原文)