宇宙

2024.05.22 18:30

幻想的な輝きを放つ「宇宙の晶洞石」おうし座の三重星 ハッブル最新画像

おうし座の三重連星(中央やや右)。ハッブル宇宙望遠鏡が撮影(NASA, ESA, G. Duchene (Universite de Grenoble I); Image Processing: Gladys Kober (NASA/Catholic University of America))

おうし座の三重連星(中央やや右)。ハッブル宇宙望遠鏡が撮影(NASA, ESA, G. Duchene (Universite de Grenoble I); Image Processing: Gladys Kober (NASA/Catholic University of America))

まるで「宇宙のジオード(晶洞石)」の断面のように光り輝く3連星系を、米航空宇宙局(NASA)のハッブル宇宙望遠鏡(HST)で撮影した最新画像が公開された。3連星のうちの1つは、数十億年前の太陽がどのような姿だった可能性があるかを垣間見せてくれる。画像全体にぼんやりと広がる星雲の中に形成された空洞領域では、3つの星が一緒に輝き、周囲に細くたなびくガス雲を照らしている。

身を寄せ合っているように見える3つの星は、HP TauとHP Tau G2とHP Tau G3。3連星の最上部に位置するHP Tauは、Tタウリ型星と呼ばれる、生まれて間もない変光星だ。変光星は、光度が変化する。天文学者らは、長期にわたる観測でこの光度変化を明らかにすることで、変光パターンを追跡調査できる。NASAは、5月15日付の声明で「Tタウリ型星は、光度の周期的な変動と不規則な変動の両方を示すことが知られている」と説明している。「不規則な変動は、成長中の若い星のカオス的な性質に起因する可能性がある。具体的には、星の周囲に形成されるガスと塵の降着円盤の不安定性や、円盤から星に落下して飲み込まれる物質、星の表面で発生するフレア(爆発現象)などだ」

Tタウリ型星は基本的に、恒星の赤ちゃんだ。典型的には、誕生してから1000万年に満たない。随分古いように思われるかもしれないが、太陽の年齢は約46億年だ。もしHP Tauが太陽を見ることができたら、自身の将来が見えるかもしれない。太陽と同じような進化の道を歩んでいるからだ。

薄絹のような反射星雲に包まれたこの3重連星は、おうし座の方向約550光年の距離にある。「反射星雲は、自ら可視光を放射しているのではなく、近くの星の光が星雲のガスと塵に反射して輝いている。自動車のヘッドライトの輝きが霧を照らしているようなものだ」と、NASAは解説する。3つの星に照らされている星雲は、まるで幽霊のように見える。

左下枠内は米キットピーク国立天文台のメイヨール望遠鏡が捉えたHP Tau周辺の領域(NASA, ESA, G. Duchene (Universite de Grenoble I); Image Processing: Gladys Kober (NASA/Catholic University of America); Inset: KPNO/NOIRLab/NSF/AURA/T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF's NOIRLab))

左下枠内は米キットピーク国立天文台のメイヨール望遠鏡が捉えたHP Tau周辺の領域(NASA, ESA, G. Duchene (Universite de Grenoble I); Image Processing: Gladys Kober (NASA/Catholic University of America); Inset: KPNO/NOIRLab/NSF/AURA/T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF's NOIRLab))

この画像は、美しいだけにとどまらない。「ハッブルは、原始惑星系円盤の調査の一環として、HP Tauを観測した。原始惑星系円盤は恒星の周囲にある円盤状の物質で、数百万年の間に合体して惑星を形成する」と、NASAは説明している。遠方の星系を調べることで、太陽系内の惑星の歴史について知ることができる。
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翻訳=河原稔

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