ブルッフはこのほど行われた報道機関とアナリスト向けの説明会で「中国からの供給なしで風力タービンを作るのは不可能に近い。中国抜きのエネルギー転換はうまくいかない」と述べた。
ブルッフのコメントは、欧米企業の製品より低価格で販売される中国で作られた完成品一式との競争ではなく、中国製の供給品や部品を切実に必要としている企業にとって、状況が複雑であることを浮き彫りにしている。
Siemens Energyの風力発電部門であるSiemens Gamesa(シーメンス・ガメサ)は風力タービンの製造で中国産の永久磁石とレアアースにほぼ頼っており、サプライチェーンを短期的に多様化させるための選択肢は限られている。
この市場力学は、中国と各国との間で貿易摩擦を引き起こし続けている。米国はこのほど中国製の電気自動車(EV)への関税を引き上げ、欧州連合(EU)は中国の風力タービンメーカーが政府補助金によって欧米メーカーより安価で販売していないか調査を開始した。
シーメンスが本社を置くドイツでも、政府とオラフ・ショルツ首相がメーカー各社に中国への過度な依存を減らすよう呼びかけている。こうした姿勢は同国の各産業の大手企業に幅広く歓迎されているわけではない。
ブルッフは、中国の風力タービンメーカーが共通市場でタービンを販売する際、Siemens Energyや欧州の同業他社と同じEUの基準に従うことが極めて重要だと述べた。
さらに、対等な国際貿易のための解決策は、米国で台頭しつつある激しい保護貿易主義と自由市場の間で妥協点を見出すことだろうと指摘した。
「欧州市場を閉ざすことには賛成しない。だが、企業がどのように資金を調達し、どこから保証を受け、そのために何を支払うのかという点では、やはり明確なルールが必要だと思う。ルールはある程度一貫したものである必要がある」とも述べ、その一方でEUの調査が最終的にそのような目的を達成することに期待を示した。
「最も好ましくないのは、関係を絶ったりリスク回避のようなことを提唱することだ。欧州と中国の間には、有益かつ不可避のつながりがある」
だがブルッフの姿勢は、Siemens Gamesaが直面している問題を覆い隠すものではない。同社は現在、中南米とアフリカのいくつかの市場から撤退している最中で、そうした市場では安価な中国製品に太刀打ちできないようだ。
ブルッフによると、価格だけが差別化要因であれば、Siemens Gamesaは複数の中国企業と競合している市場ではもう挑まないという。
ブルッフはまた、同社が陸上風力発電事業からの撤退も考えていたが、経営の観点からすると撤退は継続するよりコストがかかるため、現時点では撤退しないとの判断に至ったと明らかにした。
その代わり同社は、4~5年以内に2桁成長を目指す陸上風力発電事業の再建計画を策定することにした。同事業の成長がなければ、同社は他の選択肢を模索することになる。
(forbes.com 原文)