1998年、英国人の医師だったアンドリュー・ウェイクフィールドは、麻疹・おたふく風邪・風疹の3種混合ワクチン(MMRワクチン)の接種と発達障害を誤って関連付けた医学論文を発表した。その後、この論文には不正があったことがわかり、捏造だと広く批判され、最終的には医学誌ランセットが掲載を撤回した。
このスキャンダルで英国の医師登録から除名されたウェイクフィールドは、反ワクチンのコミュニティーで活動を続けている。
ただ、ロンドンにあるグレート・オーモンド・ストリート病院の小児科医デービッド・エリメンは、現在のはしか流行を反ワクチン派のせいにするのは「怠惰で危険」だと指摘する。
エリメン医師は今年1月、科学者による正確な情報の提供を理念に掲げる英国の慈善会社サイエンス・メディア・センターで講演し、親がわが子にワクチンを接種させる方法と理由を理解していることが肝心だと説明。「最優先事項は、子どもがいつ予防接種を受けるべきかを親に理解してもらい、簡単に接種を受けられる環境を作ること」「第二に、親が予防接種について疑問を持つのは当然であり、その傾向は新型コロナ流行を受けて以前より強くなっていると認識すること」だと話した。
感染児の親がワクチン接種呼びかけ
英国では、MMRワクチンは小児期の標準的な予防接種に含まれているが、どの年齢でも接種は可能だ。3月には感染拡大を抑制するため、未接種の若者100万人以上を対象とした無料のワクチン接種キャンペーンが展開された。生後6カ月の娘が最近はしかに感染し入院を余儀なくされた母親は、すべてのワクチン未接種者に接種を受けてほしいと呼びかけている。
ワクチン接種が可能な月齢に達する前に感染してしまった娘は、呼吸困難を起こし、乳を飲むことも難しい状態となった。「まったく眠らず、強い不快感と痛みに苦しんでいた」と母親はBBCに語り、「予防接種を受けていない人は、どうか受けてほしい。受けたくても受けられない人が今、最もリスクにさらされているのだから」と訴えた。
(forbes.com 原文)