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2024.05.24 20:00

スタートアップに「思いもよらない」交流を 東急不動産が渋谷圏に生み出す“異質な結節点”

渋谷駅を中心とした半径2.5㎞圏内の「広域渋谷圏」の開発を進める東急不動産。
この街づくりの主軸のひとつに「スタートアップの交流促進」がある。その要諦とは何か。

同社執行役員・黒川泰宏と、渋谷に社屋を構えるジェネシア・ベンチャーズの田島聡一の対談から、起業家が出会う新たな広域渋谷圏を構想する。


渋谷、原宿、表参道、青山、代官山、恵比寿、広尾―。渋谷駅から半径2.5㎞圏内エリアが今、生まれ変わろうとしている。東急グループでは、同エリアを「広域渋谷圏」と定め、東急不動産はこのうち複数のエリアで開発を進めているのだ。

渋谷・桜丘の新複合施設「Shibuya Sakura Stage」をはじめ、「東急プラザ原宿『ハラカド』」、代々木公園Park-PFI計画など、すでに開業しているものを含めて2024年度までに次々に誕生する。

同社渋谷事業本部長の黒川泰宏(以下、黒川)は、エリアの魅力をこう分析する。

「世界的に珍しいほどに、個性の強い街が半径2.5㎞圏内に集まっているエリアなんです。大規模開発によってどの街も同じような光景にしてしまうのではなく、圏内に散らばった街の魅力が交わることで新しいものが生まれるような、そんなエリアをつくっていきたいと考えています」(黒川)

特に東急不動産がエリアの可能性を見いだしているポイントがスタートアップ共創だ。もともと渋谷エリアは「ビットバレー」と呼ばれるなど、ITスタートアップの聖地として多くの起業家を引きつけた。加えて急不動産の主導などにより、渋谷駅から国道246号沿いにはスタートアップ企業・支援者が集積し、スタートアップ共創のエコシステムが生まれていった。

「スタートアップ企業にとってより魅力的な街になるように、オフィスの床面積を増やすための開発には力を入れてきました」と黒川。しかし、それだけでは十分ではないと話す。「このエリアに来れば、大企業やスタートアップ、VC、そして街の文化を大事にしてきた地元住民の方々など、多様なバックグラウンドの人々が行き交う。そうした交流により、アイデアやイノベーションが生まれることこそが重要です。そう感じさせる新たな街づくりが必要になってきている 」(黒川)

個性の強い街やさまざまな空間を作り、“ 思いがけない出会い”につなげる  黒川泰宏

個性の強い街やさまざまな空間を作り、“ 思いがけない出会い”につなげる 黒川泰宏

渋谷を拠点とし、国内外のシード期のスタートアップを多く支援してきたVCにジェネシア・ベンチャーズがある。代表取締役で、日本ベンチャーキャピタル協会会長も務める田島聡一(以下、田島)は、観光・歓楽街とビジネス街の両面を併せもつ広域渋谷圏の特異性を「カオス」と表現し、エリアの可能性をこう分析した。

「ヒラメキは、異質なもの同士が出会うことで生まれます。混沌とした渋谷は、そうした偶発的な出会いが生まれるポテンシャルがある地域です。国内ではこうした地域は限られます。ここから、日本の産業競争力が上がっていくのではないかとわくわくしています」(田島)

さまざまな「場」を用意しフィジカルな出会いにつなげていく

22年12月には桜丘のサウナ施設「渋谷SAUNAS(サウナス)」がオープン。「Shibuya Sakura Stage」38階では、食を起点とした起業支援施設「manoma」が稼働を始めている。 施設内には大企業、スタートアップ、VCなど誰もが使用できるイベントスペース が用意され、ネットワーキングなどに活用できる。

「“好きな場所を選んだら思いがけない出会いがあった”という仕掛けにつなげていきたい。サウナのように日常使いできる気軽な場から、ビジネスの話をするフォーマルな場まで、さまざまなバリエーションの空間をつくり、提供したいのです」(黒川)

これまで、大企業とスタートアップの連携を多く手がけてきた田島は、「ビジネスに新たな付加価値をつけるためには、自社に閉じたアセットでは限界がある」と指摘する。発言の背景にあるのは、あらゆる業種の企業が直面する国内労働人口の減少。従来のサービスクオリティの維持が難しくなり、DX(デジタルトランスフォーメーション)などの変革による効率化・合理化が求められるなかで、事業価値を生み続けなくてはならない。

こうした現状に対し、黒川は、「スタートアップとの連携が打開策のひとつになっていくと考える大企業は増えています」と説明する。その点、広域渋谷圏で期待されるのはリアルでフィジカルな出会いだ。

「これまでスタートアップと大企業がシームレスに出会い、新たな事業を生み出していけるような場所は少なかった。異質なもの同士の出会いの面白さは、お互いが気づいていなかった強みに気づき、思いもよらないサービスが生まれることです。広域渋谷圏には個性の異なる“場”が散らばっていて、画一的ではない。偶発的な発見が生まれやすく、新たな産業が生まれる契機になっていくはず」(田島)

渋谷のカオスが、異質なもの同士の出会いと新たな価値を生み出す  田島聡一

渋谷のカオスが、異質なもの同士の出会いと新たな価値を生み出す 田島聡一

渋谷をハブに、スタートアップと世界をつなげる

広域渋谷圏のもうひとつのチャレンジが、世界に開かれた場にすることだ。Shibuya Sakura Stageでは、マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授をアドバイザーに迎えたアクセラレータープログラム「(仮称)Shibuya Deep-tech Accelerator」の提供準備が進んでおり、東大や京大、東南アジア圏の大学なども関心を寄せている。世界に開いていく力は、従来から開発を共に進めてきた渋谷区とも連携しながら、産官学で生み出していく。

目指すべきは、スタートアップや起業家にとって、広域渋谷圏が多くの異質な出会いをかなえる“結節点”となることだ。「MITの知見、勢いのある東南アジア圏の刺激、渋谷のスタートアップが交ざり合い、イノベーションを起こす。そして、日本のスタートアップがこの地から世界に出ていく未来を想像しています」(黒川)


本田圭佑、岸田文雄首相も参加したスタートアップカンファレンス

広域渋谷圏の街づくりで、東急不動産はスタートアップや起業家らを対象としたイベントも積極的に仕掛ける。3月18日には、プロサッカー選手兼監督で投資家の本田圭佑らが創業したファンド「X&KSK Fund」と連携し、AIやエンタメといったテーマを軸に各界のスペシャリストを招いたカンファレンスイベント「CREATE」を開催。起業家や投資家ら600人超のオーディエンスが集い、盛況となった。

イベントは 、本田とサイバーエージェントの藤田晋社長とのセッションから幕を開け、ベンチャーキャピタル、Web3、AIといった7テ ーマで約8時間続いた。最終セッションでは、小林史明衆議院議員が本田と共に登壇。政府が各種支援を進めることを小林議員が説明すると、本田は「視座の高さが大事。最初からグローバルを視野に入れられる交流の機会が重要」と指摘した。イベントは岸田首相が閉会のあいさつを務めた。

東急不動産
https://www.tokyu-land.co.jp

左:くろかわ・やすひろ◎東急不動産 都市事業ユニット 渋谷事業本部 執行役員本部長。17年からスタートアップ事業に従事し、「Plug and Play Japan」の渋谷への誘致などに携わる。22年から現職。

右:たじま・そういち◎三井住友銀行、サイバーエージェント子会社のサイバーエージェント・ベンチャーズ(現サイバーエージェント・キャピタル)代表取締役を経て、2016年にジェネシア・ベンチャーズを創業。23年から日本ベンチャーキャピタル協会会長

Promoted by 東急不動産 / text by Rumi Tanaka | photographs by Shuji Goto | edited by Kaori Saeki