こうした人々は、休暇を取ったことに遠慮しているわけではないし、留守中に泥棒に入られることを心配しているわけでもない。ただ、職場に休暇申請をしていないため、自宅を不在にしている事実を上司に知られたくないのだ。「hush trip(ハッシュトリップ、秘密の旅行)」や「hush-cation(ハッシュケーション、秘密のバケーションの意)」と呼ばれる旅行形態である。
根底にある考え方はこうだ。どこにいても仕事ができるのなら、休暇先から出勤簿にログインし、現実のビーチを背景にオンライン会議に出席したってかまわないのではないだろうか? 旅行中であることを隠しておきたければ、ノートパソコンのカメラをオフにすればいい。
米国ではフルタイム労働者の約13%が在宅勤務で、約28%が出勤と在宅を組み合わせたハイブリッド勤務で働いており、労働人口の相当数がリモートワークに移行している。出勤を義務化すれば退職者が増える恐れがあるとの報告書も最近発表された。今年の夏休みには、リモート勤務中の同僚が(特にZ世代の場合)実は休暇先でこっそり仕事している、という事例に出くわすかもしれない。
だが、ハッシュトリップやハッシュケーションが原因で上司ともめたりはしないのだろうか?
ハッシュケーションに関する調査結果は幾つか発表されているが、リモートワーカーがあこがれているだけなのか、それとも「静かな退職」のように実際に行動に移しているのかはまだよくわかっていない。
そこで、人事、ビジネスリーダーシップ、セラピーの各専門家に、このような休暇形態にメリットはあるのか、背景にどのような職場の問題があり得るのか、会社に発覚したら解雇される恐れはあるのかなどについて話を聞いた。