米国南部テキサス州オースティンで毎年開催されるSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)は、熱狂的なファンを抱える巨大複合イベントだ。最先端テクノロジーの祭典で、世界各地からスタートアップや関係者が集う。海外からの参加者も多く、また毎年参加しているという人も目立つ。カンファレンスだけでも参加者は7万人にのぼり、イベント公式グッズに身を包んだ人々をダウンタウンの至る場所で目にすることができる。
一体、SXSWの何が彼らを魅了するのか。イベントのブランディングや参加者のエンゲージメントを高める仕掛けについて、現地取材をもとに考察したい。
自然と高まる「高揚感」のワケ
筆者は今年3月、SXSWに初めて参加した。「とにかく楽しい」「参加すべき」という感想を耳にする機会はあった。一体SXSWは他のイベントやカンファレンスと何が違うのか。これまで多数の海外カンファレンスに参加してきた筆者が注目した最大の違いは、ダウンタウン全体が会場となる点だ。
ダウンタウン全体に会場が点在している
会期中、カンファレンスや音楽祭、映画祭などがダウンタウンに点在する会場で繰り広げられる。会場はコンベンションセンターだけでなく、ホテルや飲食店も含まれる。ダウンタウン全体に散らばった各会場を歩いて回遊する形になる。
ストリートを歩くだけで高揚感に包まれる
ストリートにはSXSWのフラッグが掲げられ、その下を世界中から集まった参加者らが行き交う。その光景を見るだけで、お祭り気分になる。何より、地元から歓迎されていることが伝わってきて、居心地が良い。街にはパフォーマーも現れる。ラッパーにドラマー、弾き語り。SXSWとは関係なくゲリラ的にパフォーマンスをしているものと思われるが、自然と高揚感を得られる。
地元全体が歓迎ムードだ
夕方以降は音楽イベントも各会場でスタートする。SXSWとは関係のない飲食店やクラブ、ライブハウスでも音楽イベントが繰り広げられる。筆者はあるSXSW公式会場に徒歩で向かっていたところ、飲食店でロックバンドが演奏しているのをたまたま発見。SXSWとは関係のないイベントだったが、入場料無料で楽しませてもらった。
こうした回遊型イベントの場合、経済効果は大きくなる。事実、SXSWの経済効果は380億円とする試算もある。単一会場と比べて、より多様な事業者にも経済的恩恵が期待できるといえよう。
ネットワーキングの仕掛け
通常、海外のカンファレンスは参加者にネットワーキングの機会を提供する。ウェルカムパーティーやディナー、コーヒーブレークといった企画は一般的といえる。パンデミックを経て、オンラインイベントが一般化した今、リアルな場でのネットワーキングの機会は、イベントやカンファレンスの生命線といえる。