欧州

2024.05.17 09:30

ウクライナ軍がATACMSでクリミアをまた攻撃 難敵MiG-31迎撃戦闘機に被害か

ロシア空軍のMiG-31迎撃戦闘機(Shutterstock.com)

米国が4月に地上発射型弾道ミサイル「ATACMS」の新たな供与分をウクライナへ送り始めたとき、ロシア軍の指揮官たちは次に何が起こるかわかっていた。

なぜなら前例があったからだ。昨年後半、ウクライナがATACMSを20発ほど米国から入手したあと、ロシア側は前線からそれほど離れていない複数の飛行場をATACMSで攻撃され、ヘリコプターや防空システムを破壊されていた。発射重量1700kgほどのATACMSは空中で炸裂し、擲弾(てきだん)サイズの子弾を何百個もばらまく。

今月1日かその少し前、米国から新たに供与されたATACMS100発あまりの一部を使った最初の攻撃を受けると、ロシア空軍とロシア海軍航空隊は軍用機の多くを前線近くの基地からATACMSの射程圏外の基地に疎開させ始めた。精密誘導されるATACMSは、モデルによって160〜300kmの射程がある。

だが、すべてのロシア軍機が退避したわけではなかった。14日夜、ロシア占領下クリミアのセバストポリ近郊のベルベク飛行場に駐機していたMiG-31迎撃戦闘機やSu-27戦闘機を、ウクライナ軍のATACMSが襲った。ベルベク飛行場は前線から南へ240kmほどの距離にある。

ロシアのある有名な軍事ブロガーは、ATACMS10発がベルベク飛行場に向けて発射されたと書いている。このブロガーによれば、ロシア側の防空レーダーは攻撃の2分前にはミサイルを探知していたという。いずれにせよ、ATACMSの数千個の子弾が飛行場に降り注いだ。それによってS-400地対空ミサイルシステムのレーダー1基と発射機2基が撃破され、MiG-31(1機)とSu-27(3機)計4機が損傷したほか、ロシア軍の人員7人が死亡したと報告されている。

これらの損害に関しては、防空装備の大破は写真で確認できるものの、戦闘機の損傷を示す視覚証拠はない。したがって、MiG-31やSu-27の損傷は暫定的なものと見なす必要がある。とはいえ、もしこれらの戦闘機が大きな被害を免れたのだとしても、今回の攻撃がロシア側にとって大きな打撃になったのは確かだ。

2022年2月にロシアがウクライナに対する戦争を拡大する前、ロシア空軍はクリミアにS-400を4基か5基配備していた。今回の攻撃に先立って、うち少なくとも1基が攻撃され、損害が出ていた。その結果、クリミアの防空網に穴が開き、ウクライナ側による攻撃がしやすくなったと考えられる。少なくとも、ロシア側がそれに対処するまではそうした状態になっているだろう。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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