欧州

2024.05.17 09:30

ウクライナ軍がATACMSでクリミアをまた攻撃 難敵MiG-31迎撃戦闘機に被害か

ウクライナ側が、とりわけMiG-31の損傷が確認されることを望んでいるのは間違いない。Su-27が厳密には中距離の空対空戦闘機なのに対して、より大型のMiG-31は長距離の空対空任務をこなし、レーダーで誘導する強力なR-37長距離ミサイルを最長350km先の目標に向けて発射できる。

英王立防衛安全保障研究所(RUSI)は2022年11月の報告書で、重量約500kgのR-37について、ウクライナ軍機にとって「回避がとくに困難」だと解説している。実際、このミサイルによるウクライナ軍機数機の撃墜が報じられている。

R-37で武装したMiG-31がクリミアに存在するために、ウクライナ軍のパイロットは探知を避ける必要から低空飛行を強いられてきた。低空飛行すると自機のレーダーで目標を探せる範囲は狭まり、もともとR-37より射程が短いミサイルで攻撃できる距離もますます短くなる。

裏を返せば、ロシア軍がMiG-31を1機失うごとに、ウクライナの空はウクライナ軍のパイロットにとってより安全になるということだ。オランダのOSINT(オープンソース・インテリジェンス)分析サイト「オリックス(Oryx)」の集計よれば、ロシア軍のMiG-31はこれまで戦闘では1機も失われていない。

一方、ロシア空軍も双発複座のMiG-31は100機程度しか保有していないので、損失を避けるためたいへんな労力を費やしている。4月、ウクライナが射程300kmのタイプのATACMSを入手したことが明らかになると、前線からちょうど300kmほどのロシア南部クラスノダール地方プリモルスコ・アフタルスクから4機のMiG-31を引き揚げ、同800km離れた同じく南部のアストラハン州プリボルジスキーに移した。

いずれにせよ、クリミア全土は長射程版のATACMSの射程圏内に入る。ロシア側は、R-37を搭載したMiG-31でクリミア上空を常時哨戒させるつもりなら、少なくとも少数のMiG-31をクリミアに残す以外、良い選択肢はほとんどない。だが、それはとりもなおさず、これらのミグをATACMSに狙われる危険にさらすことを意味する。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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