アート

2024.05.23 09:15

投資家と美術館館長が共感する「非言語的な美しさ」とは

森美術館の館長であり、国立アートリサーチセンターのセンター長でもある片岡真実氏と、日本を代表するスタートアップ「ユーグレナ」を長年率いたリアルテックファンド代表の永田暁彦氏。

アート、ビジネス、サイエンス。一見重ならない領域は、いかに混ざり合うことができるのか。領域を超えて共有される美学とは。Forbes JAPAN「Art & Business Project」のアドバイザーである二人が、エモーションナルかつロジカルに語り合った。


真理の探究への投資

永田:まず片岡さんに、簡単に僕の自己紹介をさせてください。僕は、リアルテックファンドというサイエンスに特化したファンドをやっています。サイエンティストの活動は社会的価値が非常に高いにも関わらず、経済とかけ離れていて、全く報われていない。ユーグレナの経営に関わるなかで(2023年末にCEOを退任)その状況を改善したいと考え、2015年に立ち上げました。

僕の人生のテーマは、本質的な価値があるのに、社会構造の中で正当に評価されていない人やコトを救うこと。知的障がいのあるアーティストとライセンス契約し、グッズ等の事業展開を行うヘラルボニーの経営顧問をやっているのも、そういうところに自分の人生があると思うからです。

片岡:アートの世界に似ていると感じます。アートって即効性があるものではなく、マーケットで成功しているアーティストはごく限られた人のみですし、美術館を巡るさまざまな取り組みも、利益を生むまで時間がかかる。そこにどう投資をして、10〜20年後の成果をビジョンとして描くかというところが重要なわけですが、とくに公立の美術館は単年度予算を組んで動くので、なかなか長期的なビジョンが描きにくいのが現状です。

永田:いやぁ、分かります。サイエンティストもアーティストも、真理の探究に力を注いでいるのに、経済性を証明しないとお金が入らない。だからこそブリッジになるような仕組みをつくって、いかにその純粋さを維持しながら経済面もクリアしていくかというところを請け負いたいなと。

実は僕、18歳からアートコレクターをしていて、アートが大好きなんです。10代の頃って、お金が入ると服やCDを買ったりするじゃないですか。でも、僕はずっとアート作品の購入に使っていました。ゲームや漫画を買うのと変わらないことで、それが特異だと思うこともなかったです。

片岡:どうしてアートを集めようと思ったんですか?
次ページ > アートを「買うこと」を「承認すること」と定義

文=菊地七海 写真=山田大輔 編集=鈴木奈央

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事