英国を拠点とする神出鬼没のバンクシーの作品はニューヨーク市のあちこちでも見つかっている。美術館にはバンクシーの実物大の壁画やアート作品が集められ、展示されている作品数は160点以上と世界最大のコレクションだ。
バンクシー美術館のエグゼクティブディレクター、ウィリアム・ミードは「バンクシーは過去10年間、ニューヨークのアートシーンで絶大な存在感を示してきた。バンクシーの活動に敬意を表し、最も重要な展示場所としてニューヨークを選んだ」と語った。
ニューヨーク市でのオープンに先立ち、バンクシー美術館はフランス・パリ、スペイン・バルセロナ、ポーランド・クラクフ、ベルギー・ブリュッセルで開催されている。バンクシーは2013年10月にニューヨークに1カ月間滞在し、企画『Better Out Than In(ベター・アウト・ザン・イン)』を行なった。ミードによると、バンクシーはニューヨーク滞在中、毎日新しい作品を制作したという。
『Better Out Than In』で制作された作品はグラフィティ、彫刻、インスタレーションで、ニューヨークのあちこちにお目見えした。これらの作品は社会的・政治的なメッセージを発するものや、ユーモアや風刺を含むものなど、そのテーマはさまざまなものだった。
注目すべき作品は、トラックの中に植物が配置された移動式の庭園、ぬいぐるみでいっぱいの屠殺場に向かうトラック、だまし絵効果が特徴のトラック側面の作品などだ。
「バンクシーの滞在は非常にインタラクティブで、さまざまな方法で大衆を巻き込んだ」とミードは回想した。「バンクシーは自身のウェブサイトやSNSに作品の写真や説明を投稿し、ウィットに富んだ挑発的なコメントを添えることが多かった。そうして、ファンやアート好きの人々が宝探しのようにバンクシーの新しい作品を探して写真に収めようとし始めた」
だがバンクシーの影響については賛否両論があり、一部の作品はすぐに汚されたり、撤去されたりし、また覆い隠されることもあった。
「バンクシーのニューヨーク滞在は、ストリートアートの本質や不動産の所有権、バンクシーの作品の商業化についての議論にも火をつけた」とミード。だが『Better Out Than In』はストリートアートシーンに永続的なインパクトを残し、謎めいた存在を世界で確固たるものにしているとミードは指摘した。