経営・戦略

2024.05.15 16:00

リニューアルしたティファニーのNY本店はまるで美術館

安井克至
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Dimitrios Kambouris/Getty Images for Tiffany & Co.

1837年に創業した米国の宝飾品ブランド、ティファニーは、フランス・パリを本拠とする多業種複合企業体 LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)の傘下となって以降、これまで以上に刺激的な展開を見せている。

ニューヨーク市マンハッタンの5番街と57丁目の角にあるその本店の建物は近年、大規模な改装が行われ、現在は「Tiffany Landmark」と呼ばれている。最上部の3フロアは全面的に刷新され、来店者はモダンアートが展示された美術館のような環境を実際に訪れることができる。それは確かに同ブランドの商品を引き立てている。

ここはLVMHの威信をかけた旗艦店であり、ニューヨークを訪れる観光客が必ず立ち寄る場所だ。商品は優美に陳列されている。驚かされるのは、展示されているモダンな絵画と電飾が輝くニューヨークの風景だ。ピーター・マリノの指揮の下、すべてが瀟洒に仕上げられている。

ピーター・マリノは1978年に設立した自身の設計事務所を率いるニューヨークの建築家だ。受賞歴のある数々の住宅、店舗、文化施設、ホスピタリティ・プロジェクトを世界中で手掛けてきた。芸術の支援が風景を変化させる可能性を理解した最初の建築家の1人であり、「Tiffany Landmark」の建物のコンセプト立案と店内デザインの監督を担当した。

現在展示されているアーティストおよび作品には、以下のようなものがある。リチャード・プリンスの作品複数、フランチェスコ・クレメンテ「Angelus Novus IX」および「Angelus Novus X」(2022年)、ラッシード・ジョンソン「Bruise Painting Diptych “jive Den”」(2021年)、ミケランジェロ・ピストレット「Peter Marino」(2022年)、ジュリアン・シュナーベル「Untitled (Girl without eyes) 」(2001年)などなど。

© ARR , LVMH

© ARR , LVMH

一見の価値がある。メインフロアは重厚なジュエリーの展示が来店者を迎える。回り階段が他の階へ誘う。展示されている美術品や工芸品はピーター・マリノ美術財団が所有するものであり、時々展示品の入れ替えが行われる。これらのアートはマリノ氏の40年にわたるコレクションを象徴するものだ。
© ARR , LVMH

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もちろん、目が眩むようなジュエリー、ガラス製品、銀製品は、高級品を楽しんだりギフトとして贈ったりする裕福な顧客を魅了する。それらは常にティファニー・ブルーの箱に入れられ、贈り物としても最適だ。パロマ・ピカソやエルサ・ペレッティによってデザインされたジュエリーは大切な宝物になる。

最も重要なのは、ティファニーの象徴である「ブルーボックス」だ。この箱は同社の品質を保証するものであり、贈られた人にとっても価値がある。私の個人的な経験だが、日本を訪れた際には、この箱のほうが中に入っている贈り物よりも大事にされていた。
Shutterstock

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ティファニーは現在、世界中に300以上の店舗を構える。最近の報道では、フロリダなどの保養地にオープンする予定の小規模店舗が注目されている。

ティファニーは2021年に、LVMHの経営陣に約160億ドル(現在の為替レートで約2兆5000億円)で買収された。そして今、私たちは同社がブランドを世界中に広めていくための著しい前進を目の当たりしている。ティファニーはその主業である高品質な商品に注目を集めるために、今後もアートやファッションを振興していくだろう。

forbes.com 原文

翻訳=日下部博一

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